「あなたは人権擁護者」 山城さん茅ケ崎で講演

 ことし6月、スイス・ジュネーブの国連人権理事会で日本政府による人権侵害を訴えた沖縄県の男性がいる。沖縄平和運動センター議長の山城博治さん(64)。昨年10月、沖縄県北部の米軍施設工事を巡る反対運動中に逮捕され、その後、5カ月間にわたって長期拘留された。反基地運動の先頭に立ち続けてきた山城さん=傷害罪などで公判中=に、世界の人権問題に取り組む国際機関が発したメッセージとは−。

 ■国連からの声 大きな勇気に 「あなたは人権擁護者だ」 先月16日、ジュネーブの国連人権高等弁務官事務所。日本政府による基地建設と人権侵害を報告した山城さんに、国連職員らはそう声を掛けたという。

 「あなたは(基地建設に反対する)市民らを守るために行動し、その中で拘束された。被告人だろうと、人権擁護者だ、と。大きな勇気をもらいました」 帰国から1カ月。今月17日、茅ケ崎市内で講演した山城さんは、そう語った。

 敗戦後、27年間米軍統治下に置かれた沖縄県が本土復帰した1972年、山城さんは二十歳だった。当時の佐藤栄作政権が掲げた方針は沖縄県の「核抜き、本土並み」。45年を経た今なお国土面積0・6%の同県に在日米軍施設の約70%が偏在し、政府は新たに名護市辺野古に新基地建設を推し進める。

 「私たち沖縄県民の思いを顧みない政府の圧力に屈せず、声を上げ続けるしかない」。新基地建設予定地に隣接する米軍キャンプ・シュワブのゲート前で連日、座り込みや反対運動を行ってきた。

 だが昨年10月、抗議運動中に器物損壊の疑いで現行犯逮捕され、その後、5カ月間にわたって長期拘留された。山城さんはその前年にレベル4の悪性リンパ腫を発症していたが「弁護士以外との接見を一切禁じられ、家族や医師に会うことも許されなかった」。拘留中は「ここで死んでしまうかもしれない」と追い詰められたという。

 先月15日の国連人権理事会。山城さんは「(那覇地検の取り調べで)自供と抗議運動からの離脱を迫られた。当局による明らかな人権侵害だ」と訴えた。

 同理事会には、言論と表現の自由に関する国連特別報告者のデービッド・ケイ氏が対日調査報告書を提出。同報告書でケイ氏は「沖縄の抗議行動に加えられている圧力を特に懸念している」とし、山城さんの長期拘留についても不適切と指摘した。

 山城さんは言う。

 「帰国する前、国連職員はこう言いました。『国際社会はちゃんと沖縄を見ています』。政府の押し付けにめげず、これからも日本全体へ、海外へ声を発信していく」

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