【新所長インタビュー】〈新日鉄住金・和歌山製鉄所・山寺芳美執行役員〉「安全・環境・防災」と「稼ぐ力」強化 「和歌山ブランド」の商品力高める

――就任の抱負を。

新日鉄住金・和歌山製鉄所・山寺芳美執行役員

 「『安全・環境・防災』の徹底と、『稼ぐ力』の強化を図っていきたい。当所は、和歌山・海南・堺の3地区があり、従業員は3300人、協力会社を合わせると1万3千人の大世帯。まずは『安全』の徹底。本年は全社で『安全体質特別強化年』として安全対策を強化・徹底しているが、それをしっかり実行していく。当所は昨年、一昨年と日本鉄鋼連盟から安全優良賞・優秀賞をいただいているが、今後も受賞できるよう直協全員で取り組んでいく。『安全・環境・防災』を最重要テーマとし、目立ちにくい作業・頻度の小さい作業などでも危険リスクと思うことを出し合い安全対策を徹底していく。またベテランと新人とでは災害の怖さに対する緊張感など差が出てくるが、これらも同じ目線で安・環・防への対応ができるよう取り組んでいく」

 「また当所は周辺住宅などに近い都市型製鉄所。環境・防災もさらに徹底して地域にご迷惑をかけない『ゼロ災』を実行していく。地域との連携を増やし、地域と共存することが経営基盤を強める一つの重要な柱だ」

 「もう一つは『稼ぐ力』を高めていきたい。当所のシームレス鋼管は『和歌山ブランド』として認知されているが、さらに商品力を高めていきたい。世界に広がる需要家とのネットワークを活用して、需要家ニーズに沿った新製品開発や、ソリューションやアフターサービスなどを強化して和歌山の商品力を強化していく」

 「そのためには『ものづくり力』をさらに高めていく必要がある。先達が築いてきたものづくり力を若手にしっかり伝承しながら、生産設備の能率や稼働率の向上、副資材を含めた使用原単位の向上など図っていく。(1)ゼロ災(2)稼ぐ力(3)人材育成の3点を向上させることが責務だ」

――現在の生産状況と今期生産計画は。

 「当所はシームレス鋼管の製鉄所であると同時に、鉄源供給製鉄所として位置付けられているが、前期は粗鋼生産で450万トン、製品で350万トン。今期生産計画もほぼ同様だ。製品はシームレス鋼管、堺のH形鋼など各80万~90万トン、薄板が約20万トン、中国鋼鉄向けスラブ製品が約120万トン、残りがスポット向けスラブ製品という状況だ」

 「シームレス鋼管ではスーパーハイエンド品の油井管、堺のH形鋼では大断面H形鋼、冷延鋼板でも高グレード品が主体など多彩なハイエンド品を持っているのが特徴だ」

――品種別の市場環境は。

 「シームレスは油価下落など環境が厳しく、回復するのも半年先か1年先か不透明だが、この時期こそ基礎体力を蓄える好機と捉えて製造実力の向上に力を入れている。H形鋼は東京オリンピック・パラリンピック関連の需要が堅調だ。この堅調さが当面続くと期待している。鋼板は自動車向けが堅調に推移している。当面、油井管やラインパイプの早期回復を期待したい」

――設備投資については。

 「高品質や独自性を高めていくための合理化投資や、老朽化更新投資をやっていく」(小林 利雄)

プロフィール

 入社以来一貫して特殊管の尼崎製造所に勤務。初めての高炉一貫製鉄所勤務となる。和歌山・海南・堺3地区で甲子園173個分という広さに驚くとともに、「それだけに安全対策はきめ細かくやっていきたい」。趣味はスポーツ観戦。支援する男子バレーボールVプレミアリーグの堺ブレイザーズは「私が行く試合は一度も負けていない」。野球はヤクルトファン。楽天家を自認する。「負けん気が強く、失敗も多かったが、そこから得たことは多い」。休日は神戸の自宅周辺など街歩きでリフレッシュ。

 山寺 芳美氏(やまでら・よしみ)85年(昭60)早大院機械工学修了、住友金属工業(現新日鉄住金)入社。尼崎製造所勤務。2004年鋼管カンパニー特殊管製造部熱間製管工場長、07年同特殊管製造部次長、08年同特殊管カスタマー技術部長、14年新日鉄住金参与鋼管事業部尼崎製造所長、15年執行役員、17年4月同和歌山製鉄所長。59年(昭34)6月生まれ。58歳。千葉県出身。

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