小説「横浜大戦争」ハマ舞台売り上げ好調 市内書店員PRに力

 横浜市内18区を守る“土地神”が、「うちの区がナンバーワン!」と競い合うという奇想天外な発想の小説「横浜大戦争」(文芸春秋)が市内の書店で売り上げが1、2位になる快挙を見せている。作品にほれ込んだ地元の書店員らがPRに力を入れており、“ハマ風”に乗ってブームが起きている。

 著者は保土ケ谷区出身の蜂須賀敬明さん(29)。昨年「待ってよ」で松本清張賞を獲得し作家デビューしたばかりの新人だ。

 6月15日に発売された書籍は、初版6千部のうち半分を横浜に出荷。4日後に2千部の増刷がかかり、全て市内の本屋に卸したが、「売りたい」という声が後を絶たない。出版社の担当者は「新人作家の2作目にこれだけの反響があるのは奇跡」と喜ぶ。

 県内の有隣堂で最大の売り上げがある「横浜駅西口店」では、発売初週に総合1位になる快挙を達成。有隣堂センター南駅店(都筑区茅ケ崎中央)では、入荷初日に3時間で読破した店員の藤田昭子さん(47)が「ストーリーを追うだけで横浜の歴史や各区の特色がすらすら分かる。横浜に住む全ての人に読んでほしい」と、店長に特設コーナーの設置を直談判。本来はコミックの担当だが、入り口正面に「横浜を読もうフェア」と題したスペースをつくり、「ブラタモリ」、「横浜歴史散歩」、「横浜駅SF」、「横濱エトランゼ」など横浜にかかわる人気書籍を並べハマっ子の地元愛をかき立てている。

 藤田さんは「横浜を盛り上げるぞ! お祭りだ! という気持ちでやっています。私は岐阜県出身で10年前に結婚で移住した組。横浜に何区あるかなんて『横浜大戦争』に触れるまで、考えたこともありませんでした」と言う。

 物語は土地神様の異能バトルロワイヤルという奇抜な内容だが、「老若男女いずれにも楽しめるはず。夏休みに入ったので小中高生の注目を集められるよう、遊びのある展示を工夫していきたい」と意気込んでいる。

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