【リポート】世界の街から

独善と不寛容象徴の地、モスル

過激派組織「イスラム国」が爆破した礼拝所「ヌーリ・モスク」の跡地(左)。子どもを抱えて避難する住民の姿もあった=7月1日、イラク・モスル旧市街(共同)
過激派組織「イスラム国」が爆破した礼拝所「ヌーリ・モスク」の跡地(左)と、避難する住民ら=7月1日、イラク・モスル旧市街(共同)

 「独善」「不寛容」―。過激派組織「イスラム国」(IS)のイラク内最大拠点だった北部モスルで、ISが6月21日に爆破した旧市街の礼拝所「ヌーリ・モスク」の跡地を7月初めに取材した際、こうした言葉が頭に浮かび続けた。

 モスクではIS指導者が3年前に「国家樹立」を宣言し、IS支配の象徴とみられていた。ISは掃討作戦で追い詰められ自ら爆破、傾いたミナレット(尖塔)が有名な12世紀建立の貴重なモスクの一帯は、がれきの山と化していた。

 ISが破壊したシリア中部の世界遺産パルミラ遺跡を昨年、取材した際にも同じ言葉が浮かんだ。ISは極端な宗教解釈で、遺跡や文化財の破壊を繰り返した。自分だけが正しく、異なる文化や宗教・宗派を認めない排他主義にほかならない。

 一方、イラク軍が奪還後のモスルではISに協力した市民やその家族への報復が増えているという。「ISメンバーの家族が自由の身なのはおかしい」という声も何度か聞いた。

 モスル市民はイスラム教スンニ派が多数派。ISはスンニ派で、勢力拡大の背景にはシーア派政権のスンニ派冷遇があった。ISが掃討されても両派の対立は変わらず、憎しみの連鎖が続く。抗争再燃を懸念する市民も多い。

 ISは極端としても、中東だけでなく世界各地で、多様性を認めず他者に寛容的でない傾向が強まっていないだろうか。移民や難民の排斥や、自国第一主義―。モスクのがれきの上を歩きながらそうした考えが頭をよぎり、排他主義と対立の行き着く先は「破滅」しかないとも思った。(共同通信=カイロ支局・吉田昌樹)

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