社説(8/13):個人向け融資/問われる金融機関のモラル

 日本銀行が4年以上も続けている大規模な金融緩和。その負の側面、ゆがみが私たちの身近なところに悪影響を及ぼしているのではないか。

 例えば、銀行によるカードローン融資だ。日銀の統計によると、2004年以降、3兆円台で推移していたが、14年3月には4兆円を突破。16年度末には約5兆6000億円と急増の一途である。

 背景にあるのは日銀のマイナス金利政策だ。

 無担保で使途に制限のない銀行カードローンの金利は十数%。1%前後の住宅ローンと比べて極めて高い。低金利下で利ざやを稼ぎにくくなっている金融機関にとって貴重な収入源になっている。

 銀行が融資拡大を進める一方で増えているのが、個人の自己破産申し立てである。16年は前年比約780件増の約6万4000件に上った。前年を上回ったのは実に13年ぶりのことという。

 国会や日本弁護士連合会から融資拡大を問題視する声が相次ぎ、全国銀行協会は3月、加盟行に審査体制の見直しを要請した。だが全銀協が5月に実施したアンケートで、実際に審査を厳格化したのは全体の1割に満たなかったという。「エスカレートする状況にあるのではないか」(麻生太郎財務・金融担当相)と言われても仕方がない。

 もう一つ、気になることがある。銀行が賃貸住宅の建設資金を個人に貸し出す「アパートローン」の膨張だ。

 日銀によると、16年の融資額は前年比2割増の約3兆7000億円に達し、比較可能な10年以降で最大となった。

 アパートローンの借り手は土地などの担保がある上、ローンの金利は住宅ローンより高く、銀行にとっては貸出金残高を伸ばせる。

 日銀の4月のリポートを見ると、不動産業向け貸出残高実績が九州や東北など地方によっては経済実勢で説明できる水準から懸け離れているという。融資に前のめりな様子がうかがえる。

 人口減少時代にあって貸家建設が過剰になれば、空き室率が急上昇するのは明らか。そうなればローン返済に窮する大家が続出し、借り手のないアパートが街に散在することになりかねない。

 貸家バブルを生みかねないと金融規制当局も監視を強め、最近になって貸出額は減少に転じた。だが心配されているリスクが今後、顕在化しない保証はない。

 かつての消費者金融のようにカードで個人にどんどん貸したり、収益性に疑問符が付く物件に融資したりするケースもあると指摘されている。低金利下で金融機関のモラルが問われている。

 社会問題になりかねない状態を放置していいはずはない。規制当局は厳格にチェックすべきだ。業界も地域経済に資する資金需要の掘り起こしという本来の役割に沿って業務を見直してもらいたい。

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