針仕事生かし お地蔵さんを"おめかし"/青森・八戸

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丹精込めて縫った前掛けを六地蔵にかけてあげる西村麗子さん=12日、青森県八戸市の福聚山大慈寺

 青森県八戸市長者1丁目の福聚山大慈寺の境内に並ぶ六地蔵。毎年盆や正月には新しい前掛けに着替え、墓参者を出迎えている。そんな"おめかし"に長年携わっているのは、同市十八日町の老舗寝具店「快眠ハウスにしむら」の西村麗子さん(89)。青森県内では最高齢の寝具製造1級技能士で、今も現役で働く西村さんは、約70年にわたり針仕事に従事してきた経験と技術を生かし、優しさを込めて前掛けを手縫いしている。

 「べろ掛け」をプレゼントしようと思い付いたのは約20年前、菩提寺である同寺に墓参りに訪れた時。当時建てられたばかりだった六地蔵が雨ざらしになっている様子を見て、「かわいそう」と思ったのがきっかけだった。

 本職は寝具作りや手直し。だが、値段が高い手縫いの布団ではなく、大量生産で安価な物でも十分―との考えが消費者に広まる中で、得意とする針仕事の技術を発揮できる機会も年々減っていた。前掛け作りなら、自分の技術を生かせるし、人にも喜んでもらえるのでは―との思いが募り、さっそく同寺に申し出た。

 最初は何度かでやめるつもりだったが、墓参者からの「あのお地蔵さん、かわいいね」との声を耳にしたことや、墓参りの度に日に焼けて汚れた前掛けを見たことから、続けようと決めた。

 前掛けは仕事で余った布を使い作っていたが、手縫いの布団が売れなくなったことも影響し、今年は布が無くて製作が一時危ぶまれた。「布が無いの。でも作りたい」と話す西村さんを元気づけようと、長男で店長の一弥さん(58)が7月末に東京まで買いに行った。布が手に入ると、西村さんはすぐに作り終えてしまったという。

 盆の入り前日の12日、西村さんは同寺を訪れ、小雨が舞う中、前掛けを交換した。西村さんの善意に、同寺関係者の吉田尋子さん(70)は「べろ掛けがあるだけで華やかになるし、新しくなる度に盆や正月が来たという気分になる。ありがたい」と笑顔を浮かべた。

 西村さんは1体1体に新しい前掛けをかけながら、「かっこよくなったね」とにんまり。着替え終わった姿に目を細めながら、「死ぬまで続けようと思う」と語った。

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