[大弦小弦]映画「ハクソー・リッジ」の舞台として注目される浦添城跡の一角に…

 映画「ハクソー・リッジ」の舞台として注目される浦添城跡の一角に、周囲の史跡とは趣の異なる墓所がある。最近にわかに増えた観光客も、ほとんど足を運ばない

▼深緑の木々に囲まれ静かにたたずむ墓に眠るのは、沖縄学の父・伊波普猷。かたわらの顕彰碑には「彼ほど沖縄を識った人はいない、彼ほど沖縄を愛した人はいない…」で始まる東恩納寛惇の言葉が刻まれている

▼1947年に東京で死去した伊波を沖縄に迎えようと県内外、海外まで寄付を募り、墓が造られた。生前、那覇の街が一望できるところに葬られることを望んでいたという彼の思いに、人々が応え実現した「帰郷」だった

▼死去の年に完成した著書「沖縄歴史物語」の中で、「自分の運命を自分で決定することの出来ない境遇に置かれている」と沖縄の未来を案じた伊波。それから70年がたった

▼国政選挙や知事選などで示された県民の「新しい基地はいらない」という意思は踏みにじられ続けている。浦添城から北東に見下ろす米軍普天間飛行場では昼夜を問わず軍用機が住宅地上空を飛び交い、人々の暮らしを脅かしている

▼碑の言葉はこう結ばれている。「彼は学者であり、愛郷者であり、予言者であった」。沖縄は今も、伊波が案じ、図らずも予言となった苦い現実の中にある。13日は伊波の命日「物外(ぶつがい)忌」。(玉城淳)

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