【油断をしたらサヨウナラ】実在したイラク最恐スナイパーとの心理サバイバル『ザ・ウォール』

『キック・アス』のアーロン・テイラー=ジョンソン最新作!世界を震撼させたスナイパー「ジューバ」との戦いを、『ボーン』シリーズや『オール・ユー・ニード・イズ・キル』のダグ・リーマンが映画化。9/1(金)公開ですが、一足早く見どころをご紹介!

あらすじ

2007年 イラク
アメリカ兵のアイザック(アーロン・テイラー=ジョンソン)とマシューズ(ジョン・シナ)は、いるかどうかも定かではないスナイパー相手に持久戦を強いられていた。
既に敵は去った後だと判断し遺体の確認へ向かうマシューズであったが、突如狙撃されてしまう。
援護へ向かったアイザックも狙撃され、膝を負傷しながらも建物の残骸である壁へと逃げ延びる。
通信機器の故障によって救援を呼ぶことができぬ中、無線から「救助へ向かう」と通信が入る。
微かに噛み合わぬ会話と相手の訛りに違和感を覚えたアイザックは、声の主がスナイパーであることに気付くのであった。

実在したイラク最恐のエーススナイパー「ジューバ」

2005年、「私の銃には9発の弾丸が入っている。ジョージ・ブッシュよ、お前へのプレゼントだ。私はこれから9人のアメリカ人を殺す。お前達が見るものは私がやったことだ。神は偉大なり。」という声明と共に、アメリカ軍兵士が次々と狙撃されていく動画が投稿された。
覆面を被り素性も分からぬ「ジューバ」は、イラクの若者にとってヒーローとなり伝説的な存在と化していく。
すでに殺害されたとのウワサもあるが死体は見つかっておらず、その生死も定かではない。

今作は、「ジューバ」が最後に狙ったとされるアメリカ兵との攻防戦をベースとしたものである。

画像
KIRKUK, IRAQ - MARCH 2: A view through the scope of a Peshmerga sniper rifle. Peshmerga military at the ISIL front lines some 15 km south of Kirkuk. The city of Kirkuk is around 150 miles north of Baghdad and the ancient center of the Iraqi...
画像
WASHINGTON, DC - SEPTEMBER 24: Former U.S President George W. Bush speaks at the opening ceremony of the Smithsonian National Museum of African American History and Culture on September 24, 2016 in Washington, DC. The museum is opening...

引き込まれてしまう理由がある

「自分に関わること」

どんな作品においても言えることだが、「自分に関わること」だと信じられなければ作品世界へ没入するのは難しい。

戦場へ行き 銃を持ち スナイパーに命を狙われる
あなたやぼくにとって無縁なことばかり。
それでも、冒頭10分において「自分に関わること」だと信じさせられる。
敵スナイパーがいるかいないかを話す二人のやり取りがトリガーとなり、作品世界へと入っていける。

思い返してみて欲しい。
稀に例外もあり得るが、人に何かを相談しようって時には大抵答えが出ているものだ。
確証が得られていないだけで、答えは既に選択済み。

自分の選択が正しいことに自信を持ちたくて、選択した際に伴う重荷を軽くしたくて、誰かの後押しが欲しくて相談していることが殆どではないだろうか?

相談する相手だって肯定的な意見を言ってくれそうな人を無意識に選んでいる。
ごく稀にカウンターのような反論をされることもあるが、結局は答えを変えたりなんてしない。

画像
(c)2017 AMAZON CONTENT SERVICES LLC

冒頭、シビレを切らしたマシューズがアイザックに相談する。
「敵スナイパーはすでにいない」という彼なりの答えを引っさげた上で、アイザックに後押しを求める。
が、肯定的な意見をアイザックは中々発しない。
答えを選び済みのマシューズも聞く耳を持たない。
その結果、狙撃される。

楽観的で独り善がりな選択がもたらす失敗
生きていれば誰にだって経験があると思う。
日常ではやり直しがきくこともあるが、戦場においては命取り。

設定において身近さを感じられずとも、万人に共通する人の在り方を示すことであっという間に引きずり込まれる。
彼らが観客と同じ人間であることを信じられる見事なオープニングであった。

自分一人での決断を迫られる

画像
(c)2017 AMAZON CONTENT SERVICES LLC

そこから先はひたすら疲弊していくのみ。
姿の見えぬスナイパーと対峙するアイザックの恐怖が、そのまま観客へとフィードバックされていく。

軍用の通信機器が繋がらないリアリティをぼくらは知らない。
けれど、スマホのバッテリー残量が無くなり誰とも連絡が取れない時のもどかしさは知っている。
照りつける太陽の中、荒廃した村で水も無いまま持久戦を強いられるリアリティをぼくらは知らない。
けれど、この夏の暑さの中で水分補給をできない苦痛は知っている。
散りばめられた秀逸な設定の数々は、どれもこれも日常の延長線上に感じられる。

困った時には人に相談すればいい。
相談する相手がおらずとも、スマホやPCさえあればGoogle先生という最強の助っ人もいてくれる。
それがぼくらのベーシック。
そんな日常に甘んじていればいる程に、遮断された時の絶望が跳ね上がる。
アイザックの味わう苦痛が身に染みる。

誰にも相談することが許されず、誰の助けも得られない。
現状を打破できるのは自分だけ、壁を越えれば危険がいっぱい、誰のせいにもできやしない、全ての行動・選択に責任が伴う。
自らの命を以って責任を取らなければならなくなる。

自らの人生を顧みる

画像
(c)2017 AMAZON CONTENT SERVICES LLC

誰かに相談することで何とかなることも多い。
追い込まれ、ギリギリになって、半端なままトライしたとしても、結局何とかなってしまうことの方が多い。
相談し合える人間関係を築くことも、その場の勢いも大事ではあるが、まず何より手にすべきモノがあるのだと思う。

他人の意見に左右されない揺らがぬ想い・信念
入念な準備や覚悟にだけ宿る自信・確信

戦場に身を置かぬぼくらであっても必要だと感じられるモノがたくさんたくさん描かれていた。

ラスト、最後の最後まで思い知らされる。
開いた口が塞がらず、自分の都合の良い思考回路に嫌気が差してしまった。

総合評価

実話ベースであること ジューバという存在のミステリーも魅力に感じられる作品ですが、「自分に関わること」だと信じられたのなら最上級のB級映画になるはずです。

ネタバレは何もしていません。
ぜひ劇場でご覧ください!

青春★★★
恋 ★
エロ★
サスペンス★★★★
ファンタジー★★
総合評価:A

■タイトル:『ザ・ウォール』
■配給:プレシディオ
■9月1日(金)新宿バルト9ほか全国ロードショー
(c)2017 AMAZON CONTENT SERVICES LLC

あなたにおすすめ