ひまわり

 戦争中、すっかり焼け野原になり美しいもの、心なごませてくれるものなど何もなかった焦土の東京で、なぜかヒマワリだけは、そこかしこで生き生きと咲いていたそうだ。

 雑誌「暮しの手帖」の創刊者、大橋鎭子さんの回想エッセーにある。終戦の日にラジオで玉音放送を聞いてふと庭に目をやると、青空を背にしたヒマワリがすっと高く咲いていた。復興期も夏になると山の手や下町の区別なく咲いていてずっと心を癒やされたと。

 平和に慣れ、太陽を思わせる花が視野から消えていき、自分でもその美しさを忘れかけたころ、映画館で鑑賞した「自転車泥棒」で知られるデ・シーカ監督の新作のタイトルバックに圧倒された(大橋鎭子編著「すてきなあなたに」)。

 おととい、きのうは高鍋町持田の染ケ岡地区で「きゃべつ畑のひまわり祭り」が開催された。約80ヘクタールを1100万本のヒマワリで埋め尽くすというイベントは、一部農家が景観保全で緑肥となるヒマワリを植えたことがきっかけになって始まり、年々、拡大した。

 大橋さんが圧倒されたのはマルチェロ・マストロヤンニとソフィア・ローレンが戦争に引き裂かれた男女を演じた映画「ひまわり」のタイトルバック。ヘンリー・マンシーニの旋律に乗って映し出されるウクライナのヒマワリ畑である。

 バラもカーネーションも大好きだったという大橋さんだが、映画鑑賞後は胸に込み上げるものがあって「戦争のない平和な庭に、またヒマワリを植えてみたくなった」と思ったそうだ。未来へ伝えたい戦中派の記憶である。あす終戦の日。

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