河北春秋(8/14):「ユウちゃん、久しぶり」。似顔絵師の阿部…

 「ユウちゃん、久しぶり」。似顔絵師の阿部仁文(ひろふみ)さん(39)が声を掛ける。女の子は机の向かい側にちょこんと座り、阿部さんを真っすぐに見た▼ここは、大崎市古川の画廊「しあわせ美じゅつ店」。窓の外に七夕飾りが揺れる。阿部さんがユウちゃんを描くのは4度目だという。毎年8月3、4日にある「古川まつり」がその機会。去年まで大崎市のみなし仮設住宅に住んでいたユウちゃん、今年は気仙沼市からお母さん(47)と一緒に来た▼さらさらと筆が動いて、好奇心の強そうな笑顔が仕上がった。「この子は東日本大震災の2週間後に生まれたんです」と、お母さん。3歳の時から毎年、1枚ずつ描いてもらい、成長の記録にしている▼阿部さんもユウちゃん一家も津波の被災者だ。流失した家の再建が成り、ユウちゃんは今春、古里で小学校に上がった。アワビやワカメの養殖が本業の阿部さんも、同時期に宮城県南三陸町の造成地に新宅を構え、大崎を離れた▼去年の古川まつりで振る舞った1年もののアワビは一口サイズだった。今年は三口サイズに育った。養殖が軌道に乗ったとは言いがたいが、ユウちゃんと出会った頃は明日が見えなかった。「今は手探りで未来の輪郭を描いています」。焦らずに進もうと、自分に言い聞かせている。(2017.8.14)

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