社説(8/14):事業承継2020年問題/地域経済存続へ集中支援を

 東日本大震災からの経済復興を目指す東北に、企業の事業継承問題が影を落としている。後継者難が常態化する中、団塊の世代の経営者が後期高齢者に差し掛かる2020年以降、中小・零細企業の廃業が相次ぐ事態が予想されるからだ。復興はもとより、雇用維持、技術の伝承、税収確保の観点から、支援の集中展開が急務になっている。

 東京商工リサーチ東北支社によると、東北で16年に休廃業したり、解散したりした企業は前年比8.6%増の2014件。宮城は56.9%増と突出した。団塊の世代の経営者が高齢を理由に継続を断念したケースが目立つという。

 同社の16年の全国社長年齢調査で東北の平均は62.1歳となり、全国の9地方別で最も高かった。社長の年齢は業績と連動し、高齢になるほど減収となる傾向も表れた。同東北支社は「後継者がいないと新規の投資意欲がそがれ、競争力が減退し、業績悪化につながる」と分析する。

 経営者の高齢化は全国的に進行している。中小企業庁の「事業承継ガイドライン」の資料によると、過去20年で経営者の年齢分布のピークは47歳から66歳へ移動した。同庁は、20年ごろには数十万人に及ぶ団塊の世代の経営者が大量引退するとみている。

 全国最速のペースで高齢化と人口減が進む秋田県は、事業承継対策に早くから取り組んできた。秋田商工会議所は14年、国の委託で「県事業引継ぎ支援センター」を設置し、支援体制を整備した。

 15年には起業希望者や県外からの移住者と、事業譲渡を望む事業主をつなぐ「後継者人材バンク」を東北で初めて始動させた。

 資金需要の先細りが懸念される金融機関も対応を急ぐ。東邦銀行は、後継者難で事業継続が困難となった企業と業容拡大を目指す企業との合併・買収(M&A)をマッチングする事業を展開する。フィデアホールディングスは17年度から3カ年の中期経営計画で事業承継を積極支援する姿勢を打ち出した。

 東北の被災地において、中小・零細企業は地域産業や暮らし、雇用の再生で重要な役割を果たしている。規模の大小を問わず、地場の企業は地域経済を循環させてきた。廃業はそのまま地域経済の地盤沈下につながりかねない。

 16年度決算の地方税収は7年ぶりに減少に転じる見通しとなった。金融緩和政策を柱とした安倍政権の経済政策「アベノミクス」の失速が地方からあぶり出されている。企業が事業を承継できない状況は、弱体化が進む地方経済の負の象徴であり、アベノミクスの政策効果が地方の中小・零細企業に行き届いていないことの証左とも言える。

 時間的な猶予はあまりない。東北の企業・事業所は42万。どの企業も地域に必要とされ、存続してきた事実を忘れてはならない。

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