反戦、平和伝える「宝の山」に危機

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戦争史料など約2万点を収蔵している「ゆきのした史料館」=福井県坂井市
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陶器製の地雷(左)と手投げ弾

 福井県内で草の根の反戦、平和運動に取り組む市民団体「ゆきのした文化協会」が運営する「ゆきのした史料館」(福井県坂井市)が、施設の老朽化で移転を迫られている。約半世紀にわたって集まった戦争関係など約2万点の収蔵品は、物言わぬ歴史の証人。研究者が「宝の山」と呼ぶ史料を次代に伝えようと、移転先の確保を急いでいる。

 史料館は、1950年ごろに建てられた元織物工場を改修し2001年に開設した。築70年近くなり、屋根などの傷みが目立ってきている。ゆきのした文化協会の田島伸浩代表(77)=福井県あわら市=によると、3年ほど前に所有者から、建物や史料の維持管理が将来的に保証できないと、移転を求められた。これまで複数の候補地が浮かび、無償提供の申し出もあったが、決まらなかった。

 現在は移転に向けた史料の整理が行われているが、事前に連絡すれば見学できる。劣化の恐れがある一部を除き、ほとんどを手にとって見られるのが特長になっている。

 空襲時に母の背中で亡くなった4歳の子どもの防空頭巾は、子どもの50回忌の節目で託された。農家が庭飾りに使っていた陶器製の地雷や手投げ弾は、戦中の鉄不足を象徴している。軍服やガスマスク、召集令状、配給切符、広島の被爆瓦もある。無料で貸し出しており、戦争関連のイベントで展示されたり、学校の授業で使われたりしている。

 ゆきのした文化協会は、坂井市出身の作家中野重治の妹、鈴子らが立ち上げた新日本文学会福井支部がルーツ。鈴子の自筆原稿や重治の手紙のほか、県内で発行された小説や詩集、演劇や映画のポスターなど貴重な文化史料も多い。労働組合、反原発運動に関するものや、戦前に使われていた日用品など収蔵品は幅広く、県外の博物館や大学から足しげく通う研究者もいた。

 田島代表は「戦争を直接経験した人が減っている中で、実物に触れて歴史のありのままの姿が体感できる。こちらの思いを押し付けず、見た人が自由に感じ取ってほしい。移転を機に、より活用しやすい在り方を考えたい」と話している。

 史料館の問い合わせは田島代表=電話0776(73)0720。

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