性犯罪厳罰化、成立要件に課題 被害者ケア、訴える声も

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 性犯罪を厳罰化した改正刑法が先月、施行された。性犯罪に関する規定の大幅な見直しは1907(明治40)年の刑法制定以来初めて。強姦(ごうかん)罪を「強制性交罪」に変更し法定刑を引き上げたほか、被害者の告訴がなくても起訴できるようにした。滋賀の関係者らは一定の評価をする一方、犯罪成立に必要な要件について課題を指摘する。被害経験のある女性は、性犯罪に遭った場合、一人で抱え込まないよう訴えている。

 強制性交罪は、性交に類似する行為も含め、処罰対象を広げた。法定刑は犯罪の重大性を踏まえ、下限を「懲役3年以上」から「懲役5年以上」に引き上げ、殺人罪と同じとした。従来は男性が加害者、女性が被害者としていたが、性別規定の撤廃で男女の区別をなくした。

 このほか、家庭内での性的虐待を取り締まるため、親などが影響力に乗じて18歳未満の子と行為に及んだ場合に適用する「監護者性交罪」と「監護者わいせつ罪」も新設した。

 強姦罪や強制わいせつ罪は被害者の名誉やプライバシーを保護する観点から被害者の告訴がないと起訴できない「親告罪」だったが、告訴なしでも罪に問える「非親告罪」に改めた。精神的負担が減り、埋もれていた被害の顕在化につながることが期待される。

 一方で専門家らは、性犯罪の成立に必要な「暴行・脅迫を用いて」との要件が改正刑法でも維持されたことを問題視する。

 20年以上前、見知らぬ男に襲われた滋賀県内の女性は当時、「生きて帰れるだろうか」と恐怖を覚え、抵抗できなかったと振り返る。弁護士の吉田容子・立命館大客員教授(ジェンダー論)は「被害者の意思に反していても、強い抵抗がなければ同意の上だったとみなされ、本来なら有罪が無罪になるケースもある」と指摘。「今後は法律家の経験則がより問われる。被害者がどんな心理状態に置かれるのかを考え直し、司法の責任を果たす契機にしなければならない」と話す。

 被害に遭った女性は、つらい記憶をしまい込んできた。「心はボロボロだけど、話せば家族も傷つく。自分でも認められず、誰にも言えなかった」。だが体調不良で学校を休みがちになり、自殺を図って入院した。

 長い間、被害の記憶に悩まされたが、「被害者が安心して話せる場所が必要」と数年前、当事者同士が集う自助グループを立ち上げた。「忘れようと我慢して感情にふたをしても無理が生じる。元の元気な自分に戻れたら一番いいけど、今はまだ傷ついた自分と生きている。もし被害に遭ったら、どこでもいいから助けを求めてほしい」

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