登山客の分散課題 県内誘客へ魅力創出 尾瀬国立公園

画像

 南会津町の田代山(1、971メートル)のシンボルである台形の山頂には約25ヘクタールの湿原が広がる。季節の花々や草紅葉がつくる湿原の景色を堪能できる名峰として知られる。だが、登山シーズンでも訪れるハイカーがまばらな日は少なくない。

 尾瀬国立公園には年間約29万人が訪れるが、田代山猿倉口の2016(平成28)年度の年間入山者は3800人と全体のわずか1・3%だ。本格的な登山装備がなくても行ける尾瀬沼や尾瀬ケ原など尾瀬中心部に人気が集まる中、地元は「宿泊などをする登山客があまりに少ないと有害鳥獣の駆除などに関わる人が住む地域が衰退し、自然保護が難しくなってしまう」と危機感を強める。

 福島、栃木、群馬、新潟の4県にまたがる尾瀬国立公園は、登山客の「偏在化」が顕著となっている。2016年度は関越自動車道から約1時間半とアクセスに優れる群馬県側からの入山者が約20万人と全体の7割を占め、特に鳩待口尾瀬ケ原方面(片品村)に17万2400人が集中した。一方、本県側からの入山者は3割の約8万人で、最も多い沼山口(檜枝岐村)で5万5550人だった。東北自動車道から車で2時間以上も離れているなど交通の利便性の悪さが影響しているとみられる。

 登山客が少なければ、山小屋などの経営が苦しくなり、自然保護の活動が停滞する恐れがある。山小屋は登山道の維持なども担っており、実際、山小屋が休業となった周辺では、沢に架ける木橋の管理の担い手がいなくなり、通行が危険になっている場所もあるという。

 尾瀬保護に携わる有識者らも登山客の偏在化を重要課題の一つと認識し、2006年に策定した尾瀬の施策の指針となる「尾瀬ビジョン」に登山客の集中解消を掲げた。しかし、県境を越えて登山客をどう分散化させるのか、具体策は十分に議論されていない。

 こうした中、尾瀬国立公園単独化10年の節目をきっかけに、登山客を呼び込もうと県内では新たな魅力創出に向けた動きが広がっている。

 南会津町観光物産協会は若い男女の交流イベントの会場として田代山の活用をPRしている。急過ぎない登山道や山頂の湿原散策が首都圏からの参加者に好評だ。檜枝岐村側でも村民有志が村と連携し、大津岐峠など尾瀬の山岳地帯の自然を楽しんでもらう縦走イベントを企画した。

 一方、環境省は尾瀬の案内や注意事項を外国語で周知するためのガイドラインを策定した。官民が連携して公園内の看板や標識の表記を多言語化し、海外の登山客の受け入れを目指す。

 尾瀬国立公園協議会は今年度、新たな尾瀬ビジョンの策定に着手する。尾瀬の自然保護と誘客が一体となった新しい利用の在り方について、行政、観光関係者、有識者が議論する予定だ。

 南会津町観光物産協会舘岩支部長の芝本久雄さん(69)は「観光客が尾瀬をはじめ、周辺地域を訪れてもらえるよう広く連携する枠組みをつくってほしい」と訴えている。

あなたにおすすめ