【軽率な発言】政治が劣化していく(8月14日)

 政府要人の軽率な発言が止まらない。内閣改造で初入閣した江崎鉄磨沖縄北方担当相は国会答弁で誤らないよう「役所の原稿を朗読する」とし、北方領土問題は「素人」と述べた。政権が掲げてもいない日米地位協定の見直しに言及し火消しに追われている。慎重さと素直さには感服するが、重責を担う閣僚の言葉とは到底思えない。

 南スーダン国連平和維持活動の日報隠蔽[いんぺい]、政府の国家戦略特区制度を活用した学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画など諸問題への政府対応の不満に加え、閣僚らの発言が国民の政治不信を強めているといえよう。言葉は思想や考えを伝える大事な伝達手段であり、発言者の人間性をも表す。不用意な一言が混乱を招き、政治を劣化させることに政治家は気付くべきだ。

 政府要人の心ない言動は内閣改造前からあった。台風被災地で長靴を持たず背負われて水たまりを渡った内閣府・復興政務官は「長靴業界はもうかった」と述べて辞任。東日本大震災の被害に関し「まだ東北で良かった」と言った復興相も椅子を追われた。極め付きは安倍晋三首相の都議選での「こんな人たちに負けられない」発言だろう。自民党大敗を受けて反省の弁を述べたが、国を束ねる最高責任者が国民を敵と味方に分断する発言をするとは驚いた。

 各種世論調査で安倍内閣の支持率は軒並み大幅に下落した。不支持の理由は「首相が信頼できない」がトップを占める。発言の裏に権力者の傲慢[ごうまん]さや国民軽視を感じ取る人が増えたためだろう。国民の支持を失えば、政治は行き詰まるに違いない。

 乱発されるスローガンも言葉の価値を軽んじているように映る。改造内閣の看板政策である「人づくり革命」には「上から目線だ」「政府に都合の良い人間を育てる意味か」などの批判が上がる。「1億総活躍」「教育再生」は成果を生んだのか。検証し、事態を改善して初めて言葉に実体が伴うはずだ。

 日報隠蔽と「加計学園」の獣医学部新設計画の問題は国会の委員会で審査されたが、肝心の当事者が出席しない事例が目立つ。これでは問題解明は進まない。真相を明らかにして国民の信頼を取り戻そうという誠意が政府にはないのか、と勘ぐりたくなる。

 安倍首相は先の通常国会閉幕を受けた記者会見で「信なくば立たず。何か指摘があれば、その都度、真摯[しんし]に説明責任を果たす」と表明した。忘れたわけではあるまい。政治の世界で「言行一致」はいまや死語なのだろうか。(鞍田炎)

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