【現地発】オランダ日本人対決の深層~堂安律と小林祐希はなにを感じ取ったのか

画像

 今シーズンのオランダ・エールディビジは、開幕から「オランダ北部ダービー」と呼ばれるライバルチーム同士が激突し、スペクタクルな点の取り合いの末、3対3の引き分けに終わった。
 
 時折、ピッチ上でマッチアップした堂安律(フローニンゲン)と小林祐希(ヘーレンフェーン)の競り合いも熱かった。
 
 12分、堂安がドリブルを仕掛けると、小林がスライディングタックルで襲いかかり、カバーに入ったDFが日本人アタッカーを止めた。15分にフローニンゲンがカウンターを試みたシーンでは、ロングボールをもらいに走った堂安に、小林が密着マークしながら全力で並走。そして33分、パスを出した小林に堂安のレイトタックルを見舞い、日本代表ボランチはピッチの上で悶絶、イエローカードが出された。
 
 オランダでのリーグデビューマッチがいきなり日本人対決になったことについて、堂安はとくに意識はしていなかったようだが、「日本人の選手がこうやって相手にいることはモチベーション的にも上がりますし、楽しかったです」と、小林とのデュエルを振り返った。
 
 プレシーズンマッチでは毎試合、ビッグチャンスに絡んで、強烈な印象を残していた堂安。オランダ各紙・誌の予想通り、左サイドハーフで開幕スタメンの座を勝ち取った。試合開始5分には右足でシュートを放つなど積極的な姿勢を見せたが、堂安のスルーパスはことごとくヘーレンフェーンのDFにカットされてしまった。
 
 1-2のビハインドで迎えた63分、フローニンゲンのアーネスト・ファーバー監督は長身FWトム・ファン・ウェールトを投入。ラルス・フェルトワイクとのツインタワー攻撃を仕掛けるため、堂安をベンチに下げた。
 
 その交代については「(自分の出来が)良くなかったですし、(交代は)仕方ないと思います」と一度は素直に認めたが、この時間帯の堂安は徐々にリズムが生まれ、62分には自陣左サイドから、右オープンスペースにいたフェルトワイクに絶妙のロングパスを通していた。それだけに堂安の本音は「頼むから、ここで交代はやめてほしいという感じで(交代ボードが上がるのを)待っていた」というものだった。
 
「(交代させられることは)選手としてはしょうがないことなんですけれど、乗ってきたところのタイミングだったんで……。まあ、仕方ないです」
 
 一方、オランダ2季目の小林はときに前半、速く、遅く、長く、短く、強く、柔らかく——と、メリハリの付いたパスワークでチームを操縦する貫禄のパフォーマンスを披露した。
 
「後半はちょっとロングボールで押し込まれたけれど、個人としてはボールを持った時にすごく落ち着いていて、周りが見えていたし、周りとの兼ね合いとか新しい選手との連携とか、攻撃面での不安はなかった。結果云々より、先が見えるゲームになったと自分自身感じているので、良かったです」
 

画像

 日本ではトップ下にこだわっていた男が、エールディビジ1年目の昨シーズン、ボランチに転向したことで「新しい小林祐希像」を創り出し、そこから何度もバージョンアップを重ねてきた。いま、彼が考えている「新しい小林祐希像」は、相手陣内深くに潜り込む回数を増やし、敵にとって脅威になるボランチだ。
 
「ボランチだからずっと後ろにいるというなら、ただ足が速かったり、ただ身体が強かったり、守備だけが上手い選手がボランチにいればいい。自分は、攻撃で違いを生み出せて、しかもそこで(ゲームを)作れるから、ボランチにいるという風に思われたい。『ただ後ろでバランスを取るだけじゃ駄目だな』と、今年すごく感じている」
 
 開幕戦でのプレーに「立ち位置、ボールを受ける位置は、かなり良かったと思った」と小林はかなりの手応えを得た。そして去り際に言った。
 
「堂安くん、途中で代わっちゃったのは残念だったけれど、あんだけ彼にボールを集めようとするチームになっているのがすごいですね」
 
 2度目のオランダ北部ダービーは、今シーズンの最終節、来年4月8日に予定されている。小林祐希と堂安律が、どれだけ「なりたい自分」のイメージに近づき、シーズンを締めくくるか。それまでの過程をじっくり追っていきたい。
 
取材・文:中田徹

あなたにおすすめ