【横浜】シンプル・イズ・ベスト。扇原貴宏が必要とされる理由

[J1リーグ第22節]横浜 1-0 鳥栖/8月13日/ニッパツ三ツ沢球技場
 
 今季の横浜の2ボランチは、天野純、喜田拓也、扇原貴宏、中町公祐の4人で争われているが、11節からの“12戦無敗(9勝3分)”で最もこのポジションで多くのプレータイムを記録しているのは、加入1年目の扇原である。
 
 開幕当初は3番手に位置付けられていたが、徐々に新天地の戦いにも慣れ始めると、今では不可欠なひとりとなった。
 
 以前、中澤佑二は次のように扇原のプレーを評価していた。
 
「前に出て守備をするよりは、横に幅広く動いて、パスコースを消したりする。いかにスペースを埋めたりとか、CBの前で“フタ”をするとか。サイドの裏に流れてカバーにも入る。けっこう大変なポジションだけど、一生懸命にこなしている」
 
 主に守備面について触れているが、1-0で勝利した今節の鳥栖戦の後に、背番号6のまた別の側面について中澤に訊いてみた。
 
――彼のボールのもらい方というか、その時のポジショニングはどうか?
 
「タカは真ん中で受けようとしてくれているし、相手がくっついてきたら下がらず、僕たちの近くには寄らないようにするとか、非常に細かくポジションを修正していた。そしてパスを受けたら、簡単にはたく。ボランチがボールを“こねる”と良いことはない。とにかくシンプルに、サイドにつけたり、くさびを打ったりしていたので、ゲームがスムーズに流れる時は、ボランチの球離れが良かったのかなと思う」(中澤)
 
 中澤が語るように、扇原は常にピッチ中央でパスを受ける準備をし、受けたらテンポ良く捌いていた。トラップする際に敵が近くにいれば、その逆を取るようにボールを置いて、確実に味方に預ける。パスを出した後も、リターンをもらえるようなポジショニングを欠かさない。サポートの意識は高く、間違いなく横浜の中盤を構成していた。
 
 それでも、記者の目にはミドルゾーンの攻防では劣勢を強いられていたように見え、その印象を扇原にぶつけると、一瞬だけ表情を険しくして、こう答えた。
 
「そんなに嫌な展開とは……別に自分は苦しくなかった。自分の周りにはスペースがあって、カウンターも効いていた。押し込まれて、何回かピンチはありましたけど、そこまで怖さはなかった」
 冷静沈着に振る舞う扇原をはじめ、チーム全体で、ウーゴ・ヴィエイラが奪った虎の子の1点を守り切り、横浜は完封勝利を収めた。これで3試合連続の無失点勝利を達成。伝統の堅守をベースに着実に勝点を積み重ね、上位陣に肉薄する現状について、扇原も確かな手応えを感じている。
 
「連戦を3連勝できたのは大きいし、これで上との勝点差も縮められた。全員が守備の意識をしっかり持っているし、最後のところで、(飯倉)大樹くん、佑二さん、ミロシュ(・デゲネク)らを中心に、身体を張って守ることができている。2点目を取れればベストだったけど、我慢強く戦えていた」
 
 快進撃を続けるチームにおいて、扇原もまた充実した時間を過ごしているはずだ。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)
 

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