<和牛の頂点へ>しなやかに飼育法学ぶ

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身長約145センチと小柄な千葉さん。「いつも牛とほぼ同じ目線で触れ合っている」と笑う

 全国の銘柄牛が一堂に集い、仙台市宮城野区の夢メッセみやぎ、市中央卸売市場食肉市場で9月7~11日に開催される第11回全国和牛能力共進会(全共)宮城大会が約1カ月後に迫った。最終選考を勝ち抜いた各出品区の県代表は悲願の「日本一」獲得を目指し、最終調整に余念がない。地元開催に懸ける農家やグループの思いを紹介する。

◎全共宮城大会へ向けて(2)千葉たぢ子さん(栗原)

<女性たった1人>

 「なえちゃん、駄目よ! …よーし、頑張った。お利口さんだね」

 7月下旬、栗原市金成の畜舎。繁殖農家の千葉たぢ子さん(68)は、9月の全国和牛能力共進会(全共)宮城大会に向けて、出品する雌牛の「なえの2」と一緒に、姿勢をきれいに保つ訓練をしていた。

 千葉さんは、2016年に県の基幹種雄牛に選ばれた「茂洋美(しげひろみ)」を育てた実力者。全共県代表では唯一の女性生産者だ。周囲の畜産関係者は「実績の裏には、男性とは異なる牛との向き合い方がある」とみる。

 本格的に牛を飼い始めたのは30年ほど前。嫁ぎ先の農家でコメ価格の浮き沈みを目の当たりにした。「このままだと老後、友達と温泉にも行けなくなる」。家族の手を借りないことを条件に1頭だけ飼った。

 「周りを頼る。分からないことは聞きまくる」が信条。獣医師から成育のこつを教えてもらったり、評判のいい雌牛を積極的に買い付けたり。飼育数は今や17頭まで増えた。

 栗っこ農協(栗原市)の斎和哉さん(46)は「男性にありがちな変なプライドがない。『分かんないから教えて』と旬の情報を仕入れ、実践する。牛に情が湧いて売り時を逃す男性が少なくない中、価格を見定め素早く手放すクールさもかっこいい」と評価する。

<「割り切り大事」>

 女性ゆえの苦労はほとんどなかったという。堆肥の運搬など力仕事はいち早く機械化した。全て自分の手で育てるのが一般的なのに対し、頻繁に市営牧場に預けるのが千葉流。「私一人の力には限界がある。割り切りが大事よ」と語る。

 県代表のなえの2も千葉流で育てた。「『まさかこの子が』という感じ。代表は全く狙っていなかったので怖いくらい幸運です」とほほ笑む。

 全共を見据え、市内の畜産仲間と連携体制を敷いた。現在は他の畜産農家が交代でシャンプーやブラッシング、歩行訓練などを手伝いに来ている。

 千葉さんは「いつも頼ってばかり。皆さんのおかげでここまでやれている。今は仲間と頂上しか見ていない。出るからにはトップを目指します」と表情を引き締めた。 (栗原支局・土屋聡史)

◎牛政宗の豆知識 /「仙台牛」を発信するモー

[宮城県勢] 種牛の部20頭、肉牛の部8頭、高校の部1頭が大会に挑む。全出品区での優等賞5席以内、種牛と肉牛で一つずつ首席を獲得することが目標。ブランド「仙台牛」を全国に発信するとともに、東日本大震災からの復興、支援への感謝もアピールする。

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