<米国流 直売経済>年間売上額249億円に

新鮮な野菜を袋に詰めるフルプレート農場集団のCSA会員たち=6月8日、米ニューヨーク州イサカ

 農業の大規模化、産業化への対抗手段として米国で誕生したCSA(地域支援型農業)が進化を続けている。生産者と消費者が直接つながる取引手法は肉類、魚介類、加工食品に広がり、各地で食の生産基盤と地域経済を支える。東日本大震災後、販路の回復に苦しむ被災地に応用できないか。日米教育委員会の2016年度フルブライト奨学生として調査、取材した米国CSAの今を報告する。(報道部・門田一徳)=7回続き

◎CSA先進国の今(1)支持

<喜ぶ顔 張り合い>

 みずみずしい野菜の箱が商店街に並び、にぎやかな歓声が戻ってきた。6月8日夕、米ニューヨーク州イサカ。地元の小規模な7生産者でつくる「フルプレート農場集団」が、CSAによる今季の野菜の配布を始めた。

 箱の中身はその日の朝収穫したレタス、ケール、サラダ野菜など10種。訪れたCSAの会員たちが、おしゃべりを楽しみながら次々と野菜を袋に詰めていく。

 「食べる人の喜ぶ顔を見ることができ、私たちも張り合いがあります」。フルプレート農場集団のマネジャー、サラ・ウォーデンさん(36)が忙しそうに空になった箱を交換する。

 6月から11月までの23週間、8種以上の有機野菜を会員に提供する。家族で食べ切れるだけ取り放題のシステムが人気を呼び、会員数はイサカ地域のCSAで2番目の約500人に上る。

 年会費555ドル(約6万1000円)。1週間当たりにならすと約24ドル(約2650円)になる。スーパーの有機野菜より2割ほど安い価格設定で、たくさん持ち帰れば持ち帰るほど会員は得することになる。

<地産地消追い風>

 米農務省が2016年12月発表した農産物の直接販売の調査結果によると、CSAを運営する生産者の年間売上額は計約2億2600万ドル(約249億円)に達した。

 現状では直接販売全体の1割に満たないが、インターネット販売を5000万ドル(約55億円)ほど上回った。米農務省は今後の成長分野と注視する。

 CSAが普及した背景について、コーネル大の「小規模農場プログラム」管理者、アニュ・ランガラジャンさん(53)は近年の地産地消ブームがあると指摘する。

 「地域食材は2000年ごろマンハッタンで見向きもされなかった。今はレストランがメニューでこぞってPRしている」と、消費動向の変化を説明する。

<地域経済に貢献>

 地域経済に貢献できることも、消費者がCSAを選ぶ理由の一つだ。人口約10万のイサカ地域は全世帯の12%がCSAに加入する米屈指の普及エリア。夏から秋にかけて、スーパーは売り上げが落ち込む。

 フルプレート農場集団の会員歴が3年になる大学院生セス・ソウルステインさん(36)は、CSAを支持する理由を「スーパーでも地元食材を買うが、お金の行き先がより明確だ。取り放題も経済的に助かる」と語る。

 地域マネーの大手資本への流出を抑え、地元で循環させる。CSAは消費者と生産者の直接的な取引利益だけでなく、持続的な地域社会に導く経済装置として機能する。

<CSA>Community Supported Agricultureの略。生産者が新鮮で安全な食材を消費者に直接販売して安定収入を得る取引手法。小売店や流通業者を通さないため、生産者は高利益で販売することができ、消費者は割安で食材を購入可能だ。米国内の約7400農場が実践する。

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