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業務改善にVR導入 熊本市の平田機工

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バーチャルリアリティー用のゴーグルを装着し、立体的なCG映像で再現された工場内の様子を体感する平田機工の女性社員。正面のテレビに映っている映像と同じものが見える=熊本市

 生産設備メーカーの平田機工(熊本市)が今年から、「バーチャルリアリティー(VR)」と呼ばれる仮想現実のシステムを営業や製造の現場に導入し、業務の効率化を図っている。VRはゲームを中心に普及が進むが、製造業に活用するケースは珍しいという。

 「実際に工場の中にいるような感覚が味わえますよ」と海外事業本部3Dデザイングループの土田洋子マネジャー。7月下旬、同社を訪ね、ゴーグル型のディスプレーを着けると、目の前に実在の自動車エンジン組立工場を再現した立体的なCG映像が広がっていた。

 ラインを流れる部品や組立ロボットの動きが精巧に描かれ、実際に現場を見ているような感覚になる。手元のリモコンを操作すると、仮想空間内の立ち位置が自在に移動。現実には近寄れない作動中の機器を間近に見ることもできる。

 同社のVRシステムは、比較的安価なゲーム用機器やソフトなどで構成。それぞれ別の場所にいる人が同時に一つの仮想空間に入り、マイクを通して会議もできるのが特徴だ。

 本社工場と県外の営業拠点をネット回線で結び、設計段階の組立ラインを仮想空間内にCGで再現すれば、技術者と顧客が一緒に改善点を議論することもできる。

 同社が生産する組立ラインは全長が500メートル、部品数が数十万点に及ぶものもあり、構造は複雑だ。ラインの配置や機能を顧客に説明する際、これまでは図面やCGアニメを活用してきたが、機器の使い勝手や距離感がうまく伝わらないもどかしさがあった。VR導入後は、顧客から「分かりやすい」と好評だという。

 VRで設計段階から問題点を洗い出すことができるため、同社は、納品後の改修に掛かるコストが大幅に軽減できるとみている。同社製品の9割は海外で使われるため、大人数の長期出張を伴う改修を削減できれば、導入効果は大きい。

 同社は現在、本社など国内3拠点にVRを配備。受注額1億円以上の案件を中心に活用を始めた。8月中に、導入拠点を5カ所に増やす計画だ。「いずれは海外にも広げ、社員の負担軽減やコスト削減に役立てたい」と土田マネジャー。

 情報技術(IT)に詳しい熊本大工学部の有次正義・情報電気電子工学科長は「VRは近年、機器の性能向上や価格低下が進み、輸入家具や衣料品の販売に活用する例も出てきた。製造業での活用は初めて聞いたが、面白い取り組みで、導入する価値は見込める」と話している。(猿渡将樹)

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