<鳴子温泉物語>高い稼働率 参入奏功

昨年10月に新装開店した「ますや」の夕食会場=大崎市鳴子温泉

 宮城県大崎市の鳴子温泉郷が岐路に立っている。最盛期、年135万人に達した宿泊客数が激減した温泉街に昨年、東京の大手資本が相次ぎ参入した。衰退傾向に一定の歯止めがかかったものの、地場の中小旅館は依然、廃業の連鎖が止まらない。1000年の歴史を誇る湯の街はどこへ向かうのか。再生への道筋を探る温泉郷の今を追った。(加美支局・佐藤理史)=5回続き

◎再生への岐路(1)黒船

 研ぎ澄まされたサービスと価格が、ひなびた温泉街の空気を変えた。

 客足の端境期となる6月の平日。華やかな浴衣を着た宿泊客たちが、目玉のローストビーフをはじめ多彩な料理を品定めしていた。

 「今まで使っていたホテルと比べ値頃感がある。食事も魅力的」。鳴子ファンという仙台市から訪れた40代夫婦が満足げに話す。

<既存施設を買収>

 鳴子温泉のホテル「ますや」。大江戸温泉物語(東京)が昨年5月、開業した。料金は1泊2食7980円から。特別感ではなく、気軽さを売りにする。

 同社は同時期、ますやから約1キロ東に「幸雲閣」をオープンさせた。2館合わせ客室数は148。一気に地域最大勢力に躍り出た。

 いずれも既存のホテルを買い上げ、宴会場をバイキング対応のレストランに改装。全国28施設を展開し平均客室稼働率84%(2015年)のスケールメリットを生かし、食材の一括購入などで経費を抑える。

 リピーター獲得にも余念がない。グループのホテル壮観(宮城県松島町)に泊まった米沢市の60代夫婦は「定期的に割引券が届く。テレビCMや新聞折り込みチラシもよく見掛け、刷り込まれた」と笑う。

 全国30のリゾートホテルを抱える共立メンテナンス(東京)は昨年10月、「湯元 吉祥」(59室)を開業した。ターゲットは高価格帯の客層。半年の稼働率は73%超に達し、同社は「計画値を上回る順調なスタート」と手応えをつかむ。

 両社が鳴子温泉に進出した理由はシンプルだ。泉質は8種類と豊富で、全国区の知名度がある。鉄道を含めアクセスが良く、仙台、山形両市から客を呼べる地理的な利点もある。

<年50万人を回復>

 3館の開業効果は早速、温泉郷全体の数字に表れた。1989年の135万人をピークに、15年に50万人を割った年間宿泊客数は16年、前年比3万3500人(6.7%、速報値)増の53万人と増加に転じた。

 共立メンテナンスの担当者は「上質な施設とサービスが提供できれば、客は戻ってくる確信があった」と自信を深める。

 地元旅館の心中は複雑だ。宮城県内で大型観光宣伝が展開された08、13年ですら客足は伸び悩んだ。大江戸温泉物語の進出で「大型ホテルは1万以上、中小旅館は1万円以下」という暗黙のすみ分けも崩れ、客の選択眼は厳しさを増す。

 ある旅館経営者は「大手の価格とサービスを知った客は戻らない。同じ土俵で戦っていたら生き残れない」と天を仰いだ。

<鳴子温泉物語・1>高い稼働率 参入奏功 http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201708/20170814_12037.html <鳴子温泉物語・2>放漫経営で旅館激減 http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201708/20170814_12038.html <鳴子温泉物語・3>湯治や里山 なお魅力 http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201708/20170814_12039.html <鳴子温泉物語・4>目玉づくり 有志奮闘 http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201708/20170814_12040.html <鳴子温泉物語・5>若手経営者が行動を http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201708/20170814_12041.html

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