<鳴子温泉物語>目玉づくり 有志奮闘

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潟沼でSUPを体験する鳴子中の生徒たち

◎再生への岐路(4)観光素材

 大崎市の鳴子温泉郷の山陰にたたずむ潟沼。硫黄のにおいに包まれた強酸性のカルデラ湖は、天候によって青や緑に表情を変える。

<体験型レジャー>

 同市鳴子中の1年生34人が6月中旬、SUP(スタンドアップパドルボード)を携え、恐る恐る湖に足を入れた。サーフボードのような板の上に立ち、パドルでこぐ新スタイルのサーフィン。30分もすると生徒たちはボートを自在に操り、水を掛け合って遊んだ。

 「地元を知る」をテーマにした総合的な学習。「潟沼に、こんな楽しみ方があったなんて」。男子生徒は驚きを交えて語った。

 観光名所の潟沼は、その美しさこそ知られているが、体験型のレジャーは貸しボートに限られていた。

 SUP体験は昨年7月に始まり、昨季は仙台、山形両市などから約400人が訪れた。今季は5~7月で200人が利用。リピーターも約3割いるという。

 運営団体「鳴子アーススポーツプロジェクト」でプロデューサーを務めるのは旅館「弁天閣」の阿部誠さん(47)。「大々的なPRの予算はない。地元の人に知ってもらい、口コミで輪を広げたい」と意欲的だ。

 「動」のSUPに対し、「静」の目玉づくりも進む。

 温泉街にあった古い医院を改装し、2011年に開業した飲食店「たかはし亭」は本年度、未使用だった診療室を小規模な文庫に模様替えする。

 東日本大震災を機に、鳴子温泉との交流を続ける国文学研究資料館長ロバート・キャンベルさんの力を借り、「読書ができる温泉街」として売り出す計画だ。

<外国人客対策も>

 一連の観光素材をつくる取り組みは、国の地方創生関連交付金を活用する。大崎市から委託を受けた第三セクター「鳴子まちづくり」が受け皿となり、地元有志が運営を担う。

 同社温泉事業部長の遊佐久則さん(55)=旅館ゆさ社長=は「『自分たちがやる』と手を挙げる人が出てきた。ばらばらに見えても、鳴子を動かす歯車になる」と温泉街に芽生えた空気の変化を感じ取る。

 遅れていた訪日外国人旅行者(インバウンド)獲得の動きも活発化し始めた。7月下旬、タイトー(東京)と宮城県、大崎市などが連携し、台湾の女性客に狙いを定めたパックツアーを発売。湯治体験に加え、茶道、座禅など日本文化に触れる機会を組み込む。

 岐路に立つ鳴子温泉。再生への種まきが遅れた感は否めない。希望の芽が育つかどうかは未知数だ。それでも遊佐さんは「あがいてでも前に進むしかない」と力を込める。新たな物語は始まったばかりだ。

<鳴子温泉物語・1>高い稼働率 参入奏功 http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201708/20170814_12037.html <鳴子温泉物語・2>放漫経営で旅館激減 http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201708/20170814_12038.html <鳴子温泉物語・3>湯治や里山 なお魅力 http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201708/20170814_12039.html <鳴子温泉物語・4>目玉づくり 有志奮闘 http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201708/20170814_12040.html <鳴子温泉物語・5>若手経営者が行動を http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201708/20170814_12041.html

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