<鳴子温泉物語>若手経営者が行動を

<くぼた・みほこ>東京外大卒。JTB関連の公益財団法人「日本交通公社」研究員を経て、2017年4月から現職。著書に「温泉地再生 地域の知恵が魅力を紡ぐ」など。52歳。長野県出身。

◎再生への岐路(5完)インタビュー/亜細亜大准教授 久保田美穂子氏

 年間宿泊客数の減少傾向が約30年にわたって続く鳴子温泉郷(大崎市)。再生への糸口はどこにあるのか。環境省「自然等の地域資源を活(い)かした温泉地の活性化に関する有識者会議」の委員を務めた久保田美穂子亜細亜大准教授(経営学)に課題や針路を聞いた。(聞き手は加美支局・佐藤理史)

 -温泉地を取り巻く状況は変化しているか。

<存在意義考えて>

 「20年ほど前から、それほど変わっていない。衰退の原因として、団体客の減少や日帰り温泉施設の増加が挙げられてきたが、外部環境の変化を言い訳にしても解決には至らない。課題は温泉地の内部にある」

 「最も大切な課題は、温泉地がどのような社会的な存在意義を持つかだ。観光地、歓楽地として発展した時代も役割があった。その後は長らく、現代に合ったビジョンが描けていない」

 -現代における存在意義とは。

 「一つのヒントは『自然』。温泉地は自然との一体感を感じられる場所だった。今は自然の豊かさをうたいながら、訪れた人が畏敬の念を感じるような要素が抜け落ちている。物語や空間を再構築し、積極的にアピールすべきだ」

 「群馬県の水上温泉は渓谷を下る『キャニオニング』が人気だ。ニュージーランド人が16年前に持ち込み、質の高いレジャーを提供する。その点で、昨年鳴子温泉の潟沼で始まったSUP(スタンドアップパドルボート)体験は面白い」

 -国の温泉地活性化会議は7月31日、「新・湯治」の推進を提言した。

 「入浴に加え、自然や歴史を生かしたプログラムを楽しみ、心身共に元気になることを目指す。湯治宿が残る鳴子温泉郷の強みを発揮する契機にしてほしい」

 -衰退する温泉街の再生の鍵は何か。

 「再生とはバブル期に戻すことではない。新しい話題が一定の間隔で出てくるのが元気な証拠だ。元気な温泉地を見てきた経験から言えるのは、まず行動すること。旅館経営者を中心に比較的若い人たちが立ち上がることが必要だ」

 「清掃など小さな事でもいい。何か一緒にやってみる。すると、思わぬ支援者が現れるものだ。外部の意見や視点を取り入れれば面白いアイデアは出てくる。小さな成果につながれば地域への誇りが生まれる。それが温泉地の魅力となる」

 -鳴子温泉郷は岐路に立っている。

<この機を逃すな>

 「全国チェーンのホテルが参入し(既存の旅館は)刺激を受けている。訪日外国人旅行者(インバウンド)への対策という手付かずの課題もある。いいタイミングであり、勝負の分かれ目でもある。この機を逃さず、鳴子温泉らしい物語を発信してほしい」

<鳴子温泉物語・1>高い稼働率 参入奏功 http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201708/20170814_12037.html <鳴子温泉物語・2>放漫経営で旅館激減 http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201708/20170814_12038.html <鳴子温泉物語・3>湯治や里山 なお魅力 http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201708/20170814_12039.html <鳴子温泉物語・4>目玉づくり 有志奮闘 http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201708/20170814_12040.html <鳴子温泉物語・5>若手経営者が行動を http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201708/20170814_12041.html

あなたにおすすめ