精霊流し 白ギツネ見送る

 故人をしのぶ精霊船が15日、家族や友人らの手で運ばれた。長崎市内では雨の中、仕事や趣味にちなんだ大小さまざまな船が中心部を埋めた。沿道には夕暮れから観光客らが詰め掛け、遺影やちょうちんなどを施し暗闇に浮かび上がる船を見物した。

 長崎市伊良林2丁目の若宮稲荷神社で、毎年秋に奉納される市指定無形民俗文化財の伝統芸能「竹ン芸」の継承に尽力した保存会長の光嶋輝幸さんは、4月に69歳で亡くなった。息子4人と近隣住民らが力を合わせ、全長約9メートルの精霊船とともに、雌雄2匹の白ギツネの人形を飾った全長約3メートルの台車を制作。シャギリの音に合わせながら約50人がにぎやかに送った。

 光嶋さんは1994年から22年間、保存会長を務めた。長男の茂雄さん(44)は「祭り好き、飲み好きな父だった。『記録より記憶に残る人間になりたい』と話していた」と目を細める。市立桜馬場中で光嶋さんの先輩だった里秀幸さん(70)は「当時から明るくて、周りを気遣う人気者だった」としのぶ。

 「精霊船を流してほしい」という光嶋さんの生前の願いをかなえようと準備を進めてきた。妻美恵子さん(69)は「夫も笑って見守っていると思う」と話した。

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