三浦の伝統行事「三戸のオショロ流し」

 神奈川県三浦市・三戸に伝わるお盆の伝統行事「三戸のオショロ流し」が16日、三戸海岸で行われた。これまでは地元の3地区がそれぞれ実施していたが、少子化の影響で担い手不足となり、今年は3地区で1隻の船を送り出す形式となった。合同での実施は初めてといい、保存会は「地域の伝統なので1隻となっても継続していきたい」としている。

 三戸のオショロ流しは江戸時代後期から伝わるとされ、竹と麦わらでつくった「オショロブネ」を「セイトッコ」と呼ばれる少年たちが泳いで沖まで引き、先祖の霊を送り出す行事。小学1年から中学3年までの男子が担うのが風習だ。2011年に国の重要無形民俗文化財に指定されている。

 戦後途絶えた時期もあったが、これまで上谷戸、北、神田の3地区で3隻の船を送り出していた。少子化の波が押し寄せ、神田地区が昨年、セイトッコ不足に直面して休止。先細りが懸念される中、昨年5人で船を引いていた北地区も中学生の卒業などで今年の担い手が2人となり、実施が危ぶまれた。

 当初は上谷戸地区のみで開催する予定だったが、「地域全体の行事としてやってはどうか」と同地区から提案を受けて3地区で話し合い、合同での開催となった。

 16日は3地区の保護者が午前6時ごろから浜辺に集まり、約5メートルの「オショロブネ」を製作。わらや紙でできた「オショロサマ」を載せ、新盆で使われた白ちょうちんなども飾った。北地区から1人、上谷戸地区から7人の計8人のセイトッコが午前8時ごろから、沖へと泳ぎながら縄で船を引いた。北地区の小学5年生の男児(11)は「今年も参加して、先祖の霊を送り出せてよかった」と話していた。

 保存会会長の新藤淳市さん(65)は「三戸全体で見れば子どもはいるので、1隻なら継続の心配は当面ない。人数が増えれば3隻での復活もある。文化財に指定されているので、1隻でも続けていきたい」としている。

© 株式会社神奈川新聞社