周囲のケア 転落防ぐ 安全な駅利用探る事故1年で盲導犬協会

 昨年8月に東京の地下鉄で盲導犬ユーザーが転落した事故を受けて、東京都内の大学で18日、鉄道事業者向けのシンポジウムが開かれた。鉄道会社40社80人が参加し、訓練士や視覚障害者から事故を防ぐためのアドバイスや要望に聞き入った。

 鉄道事業者にセミナーを展開する公益財団法人「日本盲導犬協会」(横浜市港北区)が初めて開催した。

 視覚障害者の転落事例を集めたデータベースを公開している成蹊大学の大倉元宏教授は「不注意による転落事故は一つもない。防止には周囲の人々の適切なケアが大切」と訴えた。

 盲導犬を利用する視覚障害者は、事故防止に役立つ駅構内の自動アナウンスを多く流すことを要望。間違った歩行に気づいたときには「ぜひ止めてほしい」と呼び掛けた。ホーム柵設置などハード面での整備は進んでいるとしながらも、「分かりやすく声を掛けてほしい」といった理解を求めた視覚障害者もいた。

 同協会盲導犬育成統括責任者の多和田悟さんは、歩道の端を歩くなどの盲導犬歩行の原則を説明。乗降やエスカレーター利用の手順をビデオで解説し、盲導犬を使った実演もした。

 参加した鉄道会社の担当者は「視覚障害者の必要としている情報を把握し、サポートする大切さを感じた」と話していた。

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