宇久でアカウミガメ卵ふ化

 佐世保市宇久町平のスゲ浜海水浴場で20日夜、絶滅危惧種のアカウミガメの卵がふ化した。宇久町観光協会によると、島で産卵とふ化が公式に確認されたのは初めて。関係者は島の環境保全や魅力発信への期待を寄せている。

 20日午後9時半ごろ。真っ暗な砂浜の上に組まれた竹の囲いを約20人の島民が息をひそめて見つめていた。視線の先には木炭のような固まり。10匹ほどの子ガメが砂から顔を出していた。約30分後。1匹がぎこちなく歩き始めると、次々にはい上がってきた。体長は5センチほど。「頑張れ」「こっちだよ」。なかなか海にたどり着かない子ガメを住民がライトで誘導。数十匹が海に泳いでいった。高校教諭の中村岳博さん(39)は「小さい体で海に向かう姿に感動した」、公務員の中島禎仁さん(48)は「成長してまた帰ってくるのが楽しみ」と声を弾ませた。

 宇久島ではこれまで、漁業者がアカウミガメが泳ぐ姿を見たり、腐った卵が見つかったりしていたが、産卵やふ化の記録は残っていなかった。7月2日朝、島民が砂浜にウミガメがはった跡があるのを発見。へこみがあり産卵の可能性があったため、観光協会が囲いを作って保護。8月10日に九十九島水族館(海きらら)の職員が掘り返し複数の卵を確認した。

 海きららによると、アカウミガメの産卵地は太平洋側に多いが、7月中旬に長崎市で産卵、11日に平戸市でふ化を確認している。川久保晶博館長は「砂浜の清掃など保護活動が実を結び、個体数が回復しているのかもしれない」と分析。28日には現地でふ化した割合を調査。県生物学会で報告する予定という。

 観光協会の檜垣督さん(38)は「無事に出てきてよかった。宇久島にしかない自然をPRするきっかけにしたい」と喜んでいた。

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