【トップインタビュー 丸一鋼管・鈴木博之会長兼CEO】「早期に値上げ達成」 海外で成長戦略展開

――今期連結業績見通しは上期が売上高750億円、経常利益117億円。通期が売上高1543億円・経常利益235億円と増収減益予想だが。

 「4~6月実績は売上高373億円、経常利益66億円で国内、海外(1~3月実績)ともにほぼ計画通りだ。ただ足元の国内6~7月、海外では4~6月だが、見込み違いが生じてきている。上期利益は予想を下回りそうだ。下期は現時点では見通し難だが下方修正もありそうだ」

丸一鋼管・鈴木会長兼CEO

――見込み違いとは。

 「製品値上げがまだ道半ばだ。素材コイルの値上がりを受けて昨年10月5千円、今年2月1万円、4月5千円と合計2万円の製品値上げをお願いしているが、平均して1万円強の値戻しにとどまっている。上げ軌道に乗っていない。早期に1万5千円さらに2万円の値上げを達成していかないと材料価格上昇分をヘッジできない。9月にかけて値上げに力を入れていく」

――需要動向は。

 「流通段階での価格転嫁ができていない現状を見ると、いま一歩というところだ。特にコラム(大径角形鋼管)は価格転嫁が遅れている。建設工事の遅れもあるようだが、200角から400角の動きが良くない。ただ品種全体では、上期販売量は前年同期比3%程度増え、製品価格も前年比では上がっているため増収にはなる」

――海外も4~6月から悪化していると。

 「ベトナムのSUNSCO社が予想を下回ってきた。東南アジア市場では、素材コイル価格は上下している中で製品価格が下がっており、値上げが遅れている。アジア市況に影響が大きい中国鉄鋼製品価格が、直近では再び上がり始めたが、それまでは安値玉が流出し、その影響が残っている。SUNSCO社は出荷額の70%がアセアンや米国など輸出向けだが、各国の輸入制限措置や中国材価格の影響が大きい」

 「一方、米国は堅調だ。一時市況下落があったが再び上昇してきた。トランプ政権による通商拡大法232条(国防条項)発動準備などの施策や国内インフラ投資拡大への期待が市況を押し上げている。ただこれも先行きどう変化していくか見通しにくい」

――インドの自動車向けステンレス鋼管は。

 「ニューデリー近郊のマネサール工場、2015年6月から操業開始した南部・バンガロール工場ともにフル操業だ。2工場合計で月2200トン生産している。高額紙幣問題の解消などでインド経済が回復しており四輪車・二輪車ともに生産が増えている。メキシコは日系向けに月1千トン弱の生産量で計画比3分の2レベルだ。日系以外向け販売が増えていない」

――今期は中期経営計画(3カ年)の最終年度です。

 「売上高は今期予想が1543億円で目標の1850億円に届かないが、営業利益は前期で245億円、ROEも同7・4%で、中期目標の『225億円、6・5%以上』を達成し、全体的にはまずまずだ」

 「足元の課題はベトナム・SUNSCO社と米国・LEAVITT社。SUNSCO社は今期利益が10億円強悪化して前期比半減の見通しだ。アセアン諸国の保護貿易拡大でベトナムからの輸出に陰りがある。米国は西海岸のMAC社、MOST社ともに主力の建材向けが堅調だが、シカゴのLEAVITT社は数字上では安定してきているが不透明感が残る」

 「国内でしっかり稼いで、海外事業で成長戦略を展開していく計画だが、海外事業はまだ一人前になっていない」

――設備投資は。

 「丸一鋼販の北陸営業所(石川県白山市)を年内に移転する。投資額は12億円。詫間工場(香川県)のめっきラインの電気系統更新も進めている。海外では米・MOST社で来年2月に2インチミルを新設する」

――人材育成について。

 「グローバル人材の育成を強化している。4月に日本の大学に留学していたベトナム人学生2人を日本で採用した。男子は大阪事務所で営業、女子は本社経理に配属した。日本の業務をしっかり学び、将来ベトナム子会社に出向させる計画だ。またベトナムから技能研修生を東京で受け入れて、3年間の研修を経て帰国した際、SUNSCO社に入社してもらうことも考えている」(小林 利雄)

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