【古河産業 創立70周年・これまでの歩みと将来展望】〈安永哲郎社長に聞く〉顧客ニーズつかみ、共に課題解決 新規事業創出で成長「絆ぐ・紡ぐ・創り出す」

 古河電工グループの中核商社である古河産業は電力・通信インフラや輸送、建築などさまざまな産業分野を支え今年で70周年を迎えた。現在までにグローバルな営業網や約3千社の顧客基盤を有する存在感ある専門商社に成長。今後は新事業創出などでさらなる発展を目指す。これまでの歩みと100年企業に向けた将来展望を安永哲郎社長に聞いた。(古瀬 唯)

――まずはこれまでの歩みから。

古河産業・安永社長

 「戦後復興で電線のニーズが高まっていた1947年に設立された電線・伸銅品販売業の東栄電業が当社の起源。設立2年後には古河電工の完全子会社となり、59年には現在の古河産業に改称した。その後は高度経済成長に貢献し、アルミ圧延品や化成品も手掛けながら順調に事業を拡大。バブル景気のピークだった89年度には国内単体の売上高は最高値となる約1500億円を記録している。その後の景気後退で一時売り上げは落ち込んだが、細やかな顧客対応を続けてきたことなどで業績は改善。16年度の純利益は過去最高を達成できた」

――海外展開についてはいかがですか。

 「世界的な営業網の広さには顧客から定評がある。51年に貿易部を設けて海外取引を開始。89年には初の海外拠点を香港に置き、事業基盤をグローバルに広げてきた。現在は中国や東南アジア、米国などに営業網を有しており16年度には海外17番目の拠点となるドイツのデュッセルドルフ事務所を開設した。今後は既存拠点の強化に力を入れたい」

――古河産業が持つ競争力は。

 「顧客にしっかり密着し要望をくみ取れる『現場力』だ。また個々の営業マンがさまざまな製品を提案できる社風も強みなので、そこもさらに伸ばす。例えば営業現場で自らの担当領域以外でも困りごとを集め、解決策を提示できればビジネスはさらに広がる。社員には商機は至る所にあるという意識で客先を回ってもらっている。3万点の商材すべてに精通することは難しいが取引先のさまざまな課題に対応できる独自のカタログを作るなど仕組みの面でも工夫をしている」

――古河電工グループの中核商社という位置付けも特徴です。

 「古河電工の製品は競争力と知名度が高い。我々には親会社の研究開発の動向を見定めながら営業現場で得た顧客ニーズを伝え、競争力のさらなる向上に貢献する役割がある。また現在親会社との連携をいっそう強め、グループ各社の拡販活動をこれまで以上に支援できるよう取り組んでいる。今後は連携範囲をさらに広げ、古河三水会に加盟する企業の製品も幅広く拡販したい。併せて商社として多くの顧客に対し存在感を発揮するため、古河グループ以外の商材も機動的に提案していく」

――成長に向け力を入れる事業分野は。

 「造船や航空機、建築などの分野にもしっかり取り組みつつ、市場が伸び当社の特徴を生かせる自動車・蓄電池・医療・鉄道・ロボットの5分野に経営資源を重点配分したい。自動車では古河電工グループの車載部品メーカー向けを中心に、供給する商材を拡大。蓄電池についてはリチウムイオン電池向けの銅箔に加え、さらに新しい提案をしていく。医療では現在ニッケル―チタン合金の線材を体内に入れる治療器具向けに供給しているが、今後は医療関連の装置も扱いたい」

 「鉄道関連は電鉄会社が手掛ける不動産開発やレジャー施設に関するビジネスを検討している。ロボット関連では現在原材料を納入している中小・中堅メーカーに対し、小型で導入しやすい価格帯の産業用ロボットを提案して製造の効率化に貢献できればと考えている。ベースとなる原材料のビジネスを大切にしつつ新たな価値を示せる存在になりたい」

――新事業に力を入れていますね。

 「新規事業を創出する組織を17年度から部に昇格させ取り組みを加速している。新ビジネスではドローンを用いて風力発電の風車などを点検するサービスが始まっており、非常に旺盛な引き合いがある。今後もさまざまな分野で挑戦して、顧客の声を生かしたサービスを手掛ける。新事業の立ち上げは社員の意欲を高める効果も大きい。商社は人がすべてなのでこれは非常に重要だ」

――今後を見据え目指すべき企業像は。

 「客先のニーズをつかんで共に課題の解決策を具現化することで、役に立つ企業であり続けたい。その想いを『絆ぐ・紡ぐ・創り出す』という当社のスローガンに込めている。我々は顧客や先達に支えられ今年70周年を迎えられた。今後も顧客とのつながりを大切にし、より太いものに紡いでいくことで新たな価値を提案する。そうしてニュービジネスを創り出すことが100年企業への大きなステップになると思っている」

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