定年後も働き続けるため、50代が準備していること

60歳定年後も働き続ける人が7割を超え、65歳以上も5割近くに。50歳代の社員は、先輩たちの後ろ姿や会社の対応から我が身の処し方を学び、定年後も働き続けるための準備を始めているようです。

60歳定年後も働き続ける環境は整った

国が企業に対して「定年制の廃止」「定年の引き上げ」「継続雇用制度の導入」のいずれかの措置(=高年齢者雇用確保措置)で「原則、希望者全員を65歳まで雇用すること」を義務付けた「改正高年齢者雇用安定法」の施行は2013年4月。

それから5年が過ぎた2018年6月、65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施している企業は99.8%(「令和元年「高年齢者の雇用状況」集計結果」厚生労働省)となり、高年齢者が定年後も働き続ける環境が整いました。

「令和元年 労働力調査」(総務省)によると、60~64歳の就業率は70.3%(前年比1.5%増)、65~69歳48.4%(同1.8%増)、70~74歳32.2%(同2.0%増)で、就業率はいずれも2%程度増加しています。また、75歳以上の就業率も10.3%(同0.5%増)。じわじわと増加しています。

70歳まで働ける環境を整える

「70歳まで働く」を目指している政府は、2020年2月に70歳までの就業機会確保を企業の努力義務とする高年齢者雇用安定法などの改正案、いわゆる「70歳定年法」、を閣議決定しました。今国会で成立すると2021年4月から適用される見通しです。

改正案には、65歳~70歳までの雇用について前出の高年齢者雇用確保措置(「定年制の廃止」「定年の引き上げ」「継続雇用制度の導入」)に次の4つが加えられています。

・他企業への再就職の実現

・フリーランス選択者への業務委託

・起業した人への業務委託

・NPO活動などの社会貢献活動への参加

では、日本組合総連合会(通称「連合」)が2019年12月に行った「高齢者雇用に関する調査2020」(対象:45歳~69歳の就業者1000名、うち60~64歳200名、65歳~70歳200名)から、現在就労している高齢者の現状と65歳以降の働き方に対するイメージを見ていきましょう。

60歳以上の就労者は労働時間と日数に満足、賃金には不満

正規・非正規で働いている60歳以上の400人が感じている仕事への満足度はかなり高く、労働時間は74%、労働日数は73%、仕事内容に対しては72%です。ところが賃金については56%が不満を持っています。もう少し詳しく見ていきましょう。

●1日当たりの労働時間:正規雇用者は8時間、非正規雇用者は6.3時間、全体6.8時間

・8時間:42.0%

・7時間:17.5%

・6時間:10.0%

・5時間:9.5%

・4時間未満:7.5%

●1週間当たりの労働日数:正規雇用者4.9日、非正規雇用者4.3日、全体4.5日

・5日:54.5%

・4日:19.5%

・3日:10.3%

・6日:8.8%

・1~2日:6.5%

●1カ月の税込み賃金:正規雇用者 33.1万円、非正規雇用者 13.0万円、全体18.9万円

・20万~25万円未満:20.5%

・5万~10万円未満:20.0%

・15万~20万円未満:19.3%

・10万~15万円未満:15.8%

*30万~50万円未満が8.8%、50万円以上が3.8%います。

次に働き続けることに対する考えを見ていきましょう。

リタイアは68歳、年金制度変更の不安

人生100年時代、45歳~59歳が考えるリタイア年齢はおおおよそ66歳、定年後も働いている人は68歳、65歳を超えた人は71歳まで。現役リタイアの年齢は、近づくと遠ざかる蜃気楼のようです。

●何歳まで働きたい?:全体67.4歳(男性67.8歳、女性67.1歳)

・45歳~49歳(200人):66.3歳

・50歳~54歳(200人):66.2歳

・55歳~59歳(200人):65.7歳

・60歳~64歳(200人):67.8歳

・65歳~69歳(200人):71.1歳

長く働き続けるときの「不安」(複数回答)のトップ3は、「体力が持つか」65.5%、「健康が維持できるか」57.5%、「十分な所得が得られるか」48.4%です。また、「年金制度が変わらないか」も37.8%いました。意外なことに「自分の能力やスキルが新たな仕事に対応できるか」の不安は19.3%(男性17.0%、女性21.6%)とわずかです。

●長く働き続ける場合の不安(複数回答)

・体力:65.5%(男性63.2%、女性67.8%)

・健康:57.5%(男性56.4%、女性58.6%)

・十分な所得が得られるか:48.4%(男性54.6%、女性42.2%)

・年金制度の変更:37.8%(男性・女性共に37.8%)

では、60歳以降も働きたいと回答した936人が考えている働き方を見ていきましょう。

生活の糧を得るため、週4日働き、賃金は税込み17万円

多くの人が「公的年金だけでは老後の生活は厳しい」と感じており、60歳以降も働き続けたい理由のトップは「生活の糧を得るため」です。週3~5日働き、税込みで5~15万円の賃金を想定しているようです。

【60歳以降も働きたい理由トップ3(複数回答)】

●59歳以下(537人)

・生活の糧を得るため:81.0%

・健康を維持するため:41.0%

・生活の質を高めるため:32.2%

●60歳~64歳(200人)

・生活の糧を得るため:81.0%

・健康を維持するため:47.0%

・生活の質を高めるため:36.0%

●65歳~69歳(200人)

・生活の糧を得るため:62.3%

・健康を維持するため:59.3%

・生活の質を高めるため:36.2%

【65歳以降の適切な働き方】

●1日当たりの労働時間:平均5.4時間

・5時間:28.9%

・8時間:17.6%

・4時間:16.2%

●1週間当たりの労働日数:平均3.9日

・5日:32.1%

・3日:30.1%

・4日:30.0%

●1カ月の税込み賃金:平均16.8万円

・5万~10万円未満:20.9%

・10万~15万円未満:20.2%

・15万~20万円未満:15.4%

*30万~50万円未満が10.5%、50万円以上も4.1%います

驚くことに65歳以降も働きたいと考えている780名の4割程度は「非正規」を、3割程度が「正社員」を希望しています。ただし、「現役時代と同じ会社」との条件が付きます。

・現役時代と同じ会社(グループ含む)で正規以外の雇用形態で働く:42.2%

・現役時代と同じ会社(グループ含む)で正社員で働く:33.1%

・現役時代と異なる会社で正規以外の雇用形態で働く:21.2%

・現役時代と異なる会社で正社員として働く/フリーランスとして働く:12.1%

*起業するは3.3%です。

新しい知識やスキルなどが仕事に生かせている人は11%

人財サービスのアデコ株式会社が2019年11月に行った「働くシニアの意識とシニアの雇用に関する調査」(対象:就業している60~69歳の1400人、人事担当者400人)によると、継続雇用制度(再雇用制度など)を利用して働いている人は181人(45.3%)。その際に研修や勉強会など学習・訓練の機会を持った人は、わずか19.9%に過ぎません。

現在の仕事で生かせているスキルや知識、ネットワークについては「これまでの仕事を通じて培ったもの」61.8%がトップです。「生かせているものはない」29.0%、「プライベートな活動で培ったもの」14.8%が続き、「セミナー・講座などの受講で培った新たなもの」は11.3%に過ぎません。

2018年3月、政府は「人生100年時代構想会議」で「リカレント教育(=学び直し)の推進」に言及しましたが、学び直しのチャンスやそれを仕事に生かすチャンスは現時点では極めて低いようです。

60歳定年の前にプレ定年?

政府は、定年後も働き続ける事ができる環境を整える方向に進んでいます。ところが足元では早期・希望退職を募る会社が増えています。2020年1月~2月に早期・希望退職者を募集した企業は19社(前年同期は9社)。わずか2か月間で昨年1年間の半分を超えました(東京商工リサーチ調べ)。

募集企業のうち赤字決算だったのは6社に過ぎず、あとは黒字リストラでした。募集対象者の年齢も、45歳以上から40歳以上へと低年齢化しています。これからは、60歳定年の前にプレ定年の選択があるのかもしれません。

人生100年時代は、40歳代、60歳代に働き方を見直す二期作の時代と言えます。現在の仕事を通してスキルや人脈を培い、更にスキルアップ(=リカレント教育)も受け自分の可能性を広げていく、そんな貪欲さが必要な時代になってきました。

(文:大沼 恵美子(マネーガイド))

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