【特集】売るのは「クルマ」じゃない

ベンツに挑むレクサス

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参加者のTシャツにサインするLEXUS TEAM SARDの平手晃平選手=8月26日
鈴鹿サーキットを走行するレクサスの車=8月26日
参加者の質問に答えるLEXUS TEAM ZENTO CERUMOの浜島裕英監督(右から3人目)=8月27日

 高級車にはブランドが必要だ。車のブランドとは、性能や快適性で優れるのはもちろん、所有することで得られる満足感、他者から「いい車」と認められ、うらやましがられる優越感を得られる製品を指すと思う。この点で日本では、歴史的な先進工業国であるドイツの3メーカー、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディが国産車に対して優位に立っている。3メーカーは「ジャーマン3」とも呼ばれ、車のプレミアムブランドの象徴的存在で、特にベンツは「ベンツ神話」と言われるほど高級車としての認知度を誇っている。

 こうしたドイツ車に迫る勢いなのがトヨタの高級車ブランド、レクサスだ。既に日本での立ち上げから12年がたち、2015年(約4万8000台)、16年(約5万2000台)とそれぞれ過去最高の国内販売台数を達成するなど好調で、ベンツ(16年販売台数約6万7000台)に迫っている。さらに飛躍するため、レクサスはブランドイメージをアップするための活動を本格化させている。

 ▽ファッション誌読者がサーキット走行

 2日間で約7万2500人の観客が訪れた三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキットの5.8キロのコースをレクサスの車20台が駆け抜けた。8月26日、27日に同サーキットで行われたGTカーで争う国内最高峰のレース、スーパーGTに合わせてレクサスがファッション誌「GQ JAPAN」と企画したイベントの一つだ。市販車の走行会はどのサーキットでも行われているが、レース期間中の開催は異例。レクサスがイベントのためにサーキットに頼み込み、レースの間の短い時間を縫って実現した。

 使われた車の中には発売当時約3700万円と国産量販車史上最高価格だったレクサスのフラッグシップスポーツカー「LFA」も。ハンドルを握るのはGQの抽選で選ばれた読者たち。こうしたイベントによくある車専門誌の読者やメーカーのファンクラブのメンバーではない。イベント初日には予選を終えたばかりのレクサスの契約レーサー全てが集まり写真撮影会も行われ、レーサーが参加者との写真撮影に応じたり、Tシャツにサインしたりするなどのサービスも行われた。

 また、レースカーの整備などが行われるピットを見学、レース本番前にチームの監督から意気込みを聞いたほか、現役レーサーによるレース解説、カクテルの作り方講座、一流写真家による参加者のポートレート撮影会なども実施。レース中のアクシデントの際に緊急車両が走るサービスロードをレースの真っ最中に車で走行、時速300キロ近くで疾走するレースカーの間近でレースを楽しむ、ファンなら「夢のような」企画も行われた。

 ▽“クルマ色”を排除

 イベントに参加した東京都杉並区の食品輸入会社代表の鈴木宏さん(46)と恵美さん(41)夫妻は「普通体験できないことが多くて、大変楽しかった。レクサスにはこれまでも好印象を持っていたが、期待を超えるイベントだった」と語った。

 イベントの狙いについてレクサス・ブランドマネジメント部グループ長の宮永悦充さんは「車好きだけではなく、グルメやアート、音楽、ファッションなどさまざまな事に興味を持たれている方にもレクサスに関心を持ってもらいたい。レクサスがこうした非日常の体験を経験できるイベントをしていることを知ってもらうことで、レクサスブランドのイメージアップにつなげていきたい」と話す。同様のイベントは来年も計画しているという。

 こうしたイメージ戦略の一環として、レクサスは2013年、東京・青山にレクサスブランドのカフェ・情報発信拠点をオープン。ライバルのベンツが運営するカフェとは違い、自社の自動車は展示しないなど“クルマ色”は極力排除し、純粋にブランドのイメージアップだけを狙った。近くニューヨークにもオープンの予定。発行する雑誌「BEYOND」やWEBマガジン「VISIONARY」でも、クルマに関する記事だけでなく、ファッションや旅行、グルメなどの情報などライフスタイル提案を狙いとしている。

 「クルマを売り込むのではなく、クルマのある生活をアピールする」―。こうしたPR戦略はホンダなども「バイクが、好きだ」をキャッチフレーズにオートバイ販売で採用してきた。「高級車としてのブランドイメージはどうしても歴史あるベンツに後れを取っている」とされるレクサスが王者に追いつくために、今後もイメージ戦略を強化する方針だ。(共同通信=太田清)

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