<リボーンアート>漁業体験で若者呼び込む 地元住民ツアー協力 地域存続へ危機感

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桃浦に移住者を呼び込む決意を語る甲谷さん

 東日本大震災で被災した宮城県石巻市の牡鹿半島を主会場に開催されている「リボーンアート・フェスティバル(RAF)2017」に、復興を願う地元住民が協力している。桃浦地区の漁師甲谷強さん(88)もその一人。甲谷さんは「RAFで多くの人に牡鹿を知ってもらえた。少しずつ移住者を呼び込み、地域の存続につなげたい」と決意する。

 甲谷さんはRAFの企画として、牡鹿半島の自然体験ツアーの講師を務めた。見学者を船に乗せ、桃浦湾で刺し網漁をした。魚はすぐさま浜辺で調理し、旬の味覚を振る舞った。

 ツアーは3回実施し、計約60人が参加。甲谷さんは「桃浦はいい所だと皆さんが言ってくれた。参加者の笑顔が忘れられない」と喜ぶ。

 10メートルを超す津波に襲われた桃浦は、震災前の65世帯から11世帯に減少した。残った世帯のほとんどが1人暮らしで、70代以上。最年少は50代で若者がいない。

 「10年後に何人残るのか。このままでは集落がなくなってしまう」。危機感を抱いた甲谷さんは2013年、震災ボランティアに取り組む筑波大の研究者と、漁業の担い手を育成する「牡鹿漁師学校」を始めた。

 目標は若者の移住だ。漁師学校は8回開催し、県内外の参加者に漁やカキむきを体験してもらった。昨年は、千葉県から50代の男性が移住する成果も出た。

 RAFとの関わりは昨年末、漁師学校を知った実行委員長の音楽プロデューサー小林武史さん(新庄市出身)の来訪が契機となった。「東京の人たちが復興のために開くなら、地元も協力しなければと思った」。甲谷さんはアート作品を設置する土地の所有者との交渉を手伝うなどした。

 住民らはRAFスタッフとして運営を支えた。荻浜地区では女性たちが食堂を運営し、地場食材の料理で来場者をもてなす。アート作品の材料として漁具を提供した漁師もいる。

 「外の人と交わり、住民が刺激を受けた。牡鹿存続のため何をするべきか気付いた」。甲谷さんはRAFが地域に与えた影響を実感する。

 RAFの開催は最低でも10年続く。牡鹿の復興に追い風が吹く。

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