カリスマの“記憶”を正しく使ってお金持ちになる方法

勉強法や記憶術に詳しく、受験指導でも定評のあるAll About記憶術ガイドの宇都出雅巳さん。脳の使い方や記憶のメカニズムを知ることで、お金との向き合い方が変わると言います。自然にお金が貯まる体質になる、宇都出流・脳と記憶の使い方とは?

目標と現実のギャップに向き合うことでお金は貯まる!

気がつくとお金を使ってしまい、なかなか貯まらない。そういう人は脳と記憶に独特の癖がある、というのはAll About記憶術ガイドの宇都出雅巳さん。その癖に気付き、お金が貯まる行動をするための考え方と行動とは?


試験勉強とお金を貯める行為の共通点とは?

私は勉強法や試験に合格する方法を多くの人に教えていますが、試験に合格する方法と、お金を貯めることに成功するのは、とても似た要素があると思っています。それは「目標」と「現実」をしっかり認識し、現時点でのギャップがどれくらいかをはっきりと知ることが大切だということです。

試験勉強であれば、だれもが試験に合格するという「目標」は明確です。しかし、そのために試験本番当日までに自分が目指す「目標」については、明確でない人がほとんどです。どのテキストや問題集を、どれぐらい理解できるようにするのか?覚えるようにするのか? 試験本番当日に目指す「目標」を具体的に明確にする。

その上で、現時点の自分がどれくらいわかっているのか、覚えているのかを日々、テキストや問題集の内容を思い出したり、語ったりすることで確かめ、「現実」を認識したうえで、どれくらい理解や記憶が足りていないかをはっきりさせることが大事なのです。

当たり前に聞こえますが、じつはこれがなかなか難しいのです。漠然と進学したいとか合格したい、成績を上げたいと考えている人が多い。また、いまの実力がどれだけなのか、客観的に捉えようとせず、曖昧にして現実と向き合おうとしません。

じつは、人間の記憶力というのは非常にいい加減なのです。記憶には大別すると2つの種類があります。1つは「エピソード記憶」。誰に会ってどんな話をしたとか、こんな出来事があったという、実体験に基づいた記憶です。もう1つは「意味記憶」です。これは勉強のように知識として頭の中に入っている記憶です。歴史の年号だとか法律の文章だとかがそれに当たります。

漠然とお金を貯めたいという考えではお金持ちになれない

「エピソード記憶」は比較的長く記憶に残るのですが、「意味記憶」は時間とともにどんどん忘れていってしまいます。「エビングハウスの忘却曲線」というのをご存知でしょうか? ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスは、3つのアルファベットの羅列を被験者がどれくらい覚えているか実験しました。すると1時間後には56%、1日後には74%、1週間後には77%、1カ月後には79%忘れるという結果になったのです。

1時間後には半分以上のことを忘れてしまう。つまりほとんど忘れてしまうのが人間の記憶なのです。ところがその現実を見ようとしない。自分は一度勉強したから大丈夫だと思いこむのですが、あくまでもそれは希望的な思い込みなのです。「目標」が曖昧で、しかも「現実」と向き合おうとしないので「現実」も曖昧。これでは、埋めるべきギャップも明確にならず、当然正しい対応はできません。

このことをお金の使い方や貯蓄行動に当てはめると、どうなるでしょうか? お金が貯まらない人は貯蓄の目標がはっきりしていない人が多い。いつまでになんのためにいくら貯蓄するという目標が明確でなく、漠然とお金を貯めたいとしか考えていないのです。

「本当の自分」=「現実」と向き合う勇気を持つ

もう1つは「現実」に対する認識が甘い。いまの収入がどれくらいで、自分がどれだけお金を使っているかを客観的に見られない人は、ついつい浪費して結局お金が貯まりません。自分の消費性向をしっかりと認識する。その上で、貯蓄するためには何が必要かを明確に知ることが大事なのです。

いまの自分がどれだけ足りていないか? 現実と向き合うのは痛みを伴います。誰もがその痛みを避けたい。でも避けているうちはギャップも認識できないし、目標に近づくこともできません。逆にギャップを認識し、意識に乗せるだけで、人は自然にそのギャップを埋める行動を取るのです。

「目標」も「現実」も一種の記憶と言えるでしょう。たとえば「10年後に500万円の貯蓄を達成する」と目標を明確にすることは、未来の「自分の姿を記憶する」ことでもあります。一方、自分がいまどれくらいお金を持っているか、日々どんなことにお金を使っているかというのは、「現在の状況を記憶する」ことでもあります。

記憶や認識を上手に使うことで、なかなかお金の貯まらない人も、貯蓄体質に変えていくことができるのです。


教えてくれたのは……

宇都出 雅巳さん

1967年、京都府生まれ。東京大学経済学部卒業。経済出版社、コンサルティング会社勤務後、ニューヨーク大学スターンスクール留学。2000年 MBA取得(マーケティング専攻)。 帰国後、外資系銀行を経て、2002年に独立。コーチ養成機関CTIジャパンリーダー(2004~2009年)、オールアバウト「コーチング・マネジメント」(現・「コーチング」)ガイド(2004年~2008年)を務め、 現在は信頼(トラスト)と尊敬(リスペクト)をベースにした組織・社会の実現を目指すトレスペクト経営教育研究所代表。NLPマスタープラクティショナー(2002年取得)、CPCC(認定コーアクティブ・コーチ・2004年取得)。

大学時代から速読法、記憶法を学び始め、読書や英語学習、試験勉強で実践。2002年には1カ月でCFP試験に、2010年には2カ月で行政書士試験にそれぞれ一発合格。その試験勉強の模様をメルマガ・ブログで実況中継し話題を呼んだ。2012年4月には、記憶術を読書や試験勉強の実践にいかに結び付けるかを解説した『「1分スピード記憶」勉強法』を出版。読売新聞土曜朝刊の「勉強プラス」コーナーで4カ月にわたって取りあげられるなど、大きな反響を呼んだ。最新刊は『記憶力が最強のビジネススキルである』

取材・文/ビルドゥングス

(文:あるじゃん 編集部)

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