【丸紅出資のチリ・センチネラ銅鉱山(4)】〈ミネラ・センチネラ社・アンドレス・エビア氏(ゼネラル・マネージャー)に聞く〉銅年産量、段階的に40万トンに拡大 鉱山の自動・省人化でコスト低減

 センチネラ鉱山は新たな鉱区の開発や新規プラントの増設などで中期的に年間生産量が約40万トンまで増加し、チリ最大規模の鉱山会社となる見通しだ。そのセンチネラ鉱山の運営会社「ミネラ・センチネラ社(出資比率・丸紅30%、アントファガスタ社70%)」のゼネラル・マネージャー(総責任者)であるアンドレス・エビア氏に同鉱山の今後の展開などについて話を聞いた。(相楽 孝一)

――センチネラ鉱山の特徴と強みをお伺いしたい。

 「エル・テソロ、エスペランサといった鉱区に加え、エスペランサ・スル、エンクエントロ(酸化鉱、硫化鉱)という鉱区を抱えており、非常に巨大な資源を有していること。鉱石品位は高くないが、効率的に採掘、生産することでその巨大な資源を生かすことができると考えている」

ミネラ・センチネラ社ゼネラルマネージャー/アンドレス・エビア氏

――操業に海水を使用していることも特徴の一つだと聞きました。

 「海水の直接利用の技術は、我々が操業していたミチジャ鉱山で15年前からスタートしている。それを発展させ、大型鉱山で初めて本格採用したのがエスペランサ鉱山だ」

――センチネラ鉱山は豊富なポテンシャルを有し、将来的に複数の新規プロジェクトを抱えています。その詳細を少しお聞きしたい。

 「まずエンクエントロ鉱区の酸化鉱プロジェクトについてはプラント建設が完了し、試運転を開始したところだ。立ち上がれば銅地金を年間5万トン生産することになる。試運転は3カ月ほどで完了する予定だ。二つ目がモリブデンの回収プロジェクト。これは試運転を年内に行い、来年に商業生産できればと考えている。また、当社がFSを進めている大きなプロジェクトの一つとして『DMC(センチネラ地区総合開発)』と名付けたプロジェクトを進めている。これはセンチネラの銅生産量を段階的に引き上げていくことと、新規鉱区の開発で鉱山寿命を2058年まで延長させようというもの。このプロジェクトには第2選鉱場の新設も含まれており、鉱石処理量も15万トン/日ほど増強される。これにより、センチネラ鉱山の銅生産量は年間40万トンまで引き上げることができる」

――モリブデン回収はロス・ぺランブレス銅鉱山でも経験がある。

 「確かにロス・ぺランブレスの人員にも協力してもらって非常に助かっている。モリブデンを副産物として回収できればコスト競争力の向上にもつなげることができる」

――将来の鉱業に向けてセンチネラ鉱山が挑戦していることはありますか。

 「非常に多くのことにチャレンジしている。一つ例を挙げれば無人トラックの運用なども含めた鉱山のオートメーション化だ。この地区のすべての操業状況を一カ所で監視できるコントロールセンターをベースに、自立した鉱山を目指した取り組みを行っている」

――鉱山のオートメーション化を進める上で難しい点はありますか。

 「特に難しいことはない。自動化において一つは通信が重要なカギだと思うが、センチネラでは非常に優れたIT技術によって支えられているので問題はない。鉱山で働く人員を確保するには飛行機代も含めて、さまざまなコストがかかるが、オートメーション化を進めることで鉱山運営を少人数で、かつ極端な例を挙げればサンチアゴなどの遠隔地で操業をコントロールできるようになれば非常に少ないコストで鉱山が運営できるようになるだろう」

 「将来的には鉱山のオートメーション化がより進み、省人化が進むだろう。若い世代の育成という点で言えば、彼らは子どものころから最新機器に接して育ってきている。抵抗無くそうしたオートメーションの環境に対応できると考えている」(おわり)

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