がん・脳卒中の治療と仕事を両立 退職防ごう

 がんや脳卒中などの患者が治療と仕事を両立できるよう支援する企業向けガイドライン(指針)を厚生労働省が設けています。働く意欲がある患者を支え、退職を防ぐのが目的で、普及が望まれています。指針の脳卒中作業部会委員を務める日本脳卒中学会理事の橋本洋一郎・熊本市民病院首席診療部長に聞きました。(高本文明)

 -指針の狙いを。

 「指針は、厚生労働省が患者の就労支援策として昨年策定した『事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン』です。労働者、事業者が利用できる支援制度や機関についても紹介しています」

 -指針は企業に対し、どのようなことが望ましいと示していますか。

 「指針では、働き手である患者の情報を医療機関と共有していくため、(1)企業側から主治医に業務内容を伝える文書(2)病状や就業上望ましい配慮を主治医が意見する文書-などのひな型を示し、これらの文書を用意するよう要請しています」

 「企業は仕事を続けられるかどうか判断し、働き続ける場合は、休暇や勤務時間について配慮する内容を決め、必要に応じて『両立支援プラン』を定めることが望ましいとしました」

 -企業が行うことは。

 「労働者と連絡を取って治療の経過や今後の見通しを確認し、復帰が可能と判断した場合は『職場復帰支援プラン』を策定することが望ましいとしています」

 -具体的な配慮の例には、どんなものがありますか。

 「時間単位の有給休暇や、休業後の復帰に向けて勤務時間や日数を短くする『試し出勤』などを挙げています」

 -脳卒中患者の職場復帰の現状はいかがですか。

 「脳卒中などの脳血管疾患で継続的に治療を受けている患者は、厚労省調査で約118万人と推計され、このうち約14%の17万人が就労世代の20~64歳です」

 「脳卒中を発症した人は、発症から3~6カ月ごろと、1年~1年6カ月ごろのタイミングで復職する場合が多く、最終的な復職率は50~60%といわれています」

 「一般に脳卒中というと、手足のまひや言語障害などの大きな障害が残るというイメージがありますが、就労世代などの若い患者は、約7割がほぼ介助を必要としない状態まで回復でき、職場復帰が可能な場合も少なくないのです」

 -脳卒中患者の両立支援に当たって留意すべきことが今年3月に追加、公表されました。

 「脳卒中では病状が安定した後でも、再発予防のために継続した服薬や定期的な通院が必要です。継続した服薬や通院が必要である場合には、労働者は主治医に通院頻度や服薬回数、服薬に伴って出やすい副作用、その内容・程度について確認し、必要に応じてそれらの情報を企業へ提供することが望ましいです」

 -障害や後遺症の特性に応じた配慮が必要になりますね。

 「病状は落ち着いていても、障害が残ることがあります。障害の中には、記憶力や注意力の低下など一見して分かりづらい『高次脳機能障害』もあり、周囲の理解や協力が得られにくいこともあるため、配慮が必要です。一方、障害があっても、生活や仕事には支障のない状態もあります。ストレスは良くありませんが、過度に安静を保つのは、もっと良くありません」

 「職場復帰後、患者が発症前の自分とのギャップに悩み、メンタルヘルスの不調に陥る場合があり、十分な注意や配慮が必要です」

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