大逆転劇の鍵は「12番目の選手たち」。浦和サポーター有志が敗れた柏戦後にとった行動とは?

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[ACL準々決勝2ndレグ]浦和 4-1 川崎/9月13日/埼玉 

 浦和にとってはホームで2-0が最低条件だったのだから、奇跡と呼ぶのは大げさだろう。川崎側から見れば、ほとんど自滅。車屋が無意味な行為で退場し、鬼木監督も采配によって選手を助けることができなかった。
 
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 ……という見方は成り立つが、浦和にとって胸のすくような夜となったことは間違いない。
 
 勝利の立役者は何人もいるが、あえて堀監督を挙げたい。
 
 63分にはマウリシオに代えてズラタンを投入。前線の駒を増やし、高さを加えた。そして70分にCKからズラタンのヘッドが決まる。
 
 75分には矢島に代えて駒井を投入。サイドにドリブラーを配置したことで、ラファエル・シルバがペナルティエリア内で働けるようになった。そして84分、駒井、柏木が右サイドを崩したところから、ラファエル・シルバのゴールが決まる。
 
 勝負どころの2ゴールは、堀監督が描いた通りの形から生まれ、この流れから高木の目の覚めるような逆転弾が決まる。ネットが揺れた瞬間、私は正直、絶句してしまった。
 
 今季、中盤戦から一気に失速した浦和にとって、この勝利はサポーターの信頼と期待をつなぎとめるものになった。
 
 プロのサッカーチームにとって、いい試合とはなにか。

 人によって答えは違うと思うが、私は観衆が「あれ見た?」と誰かに言いたくなるゲーム、プレーを見せることだと考えている。
 
 これはサッカーやスポーツに限ったことではない。
 料理だったら、「あれ食べた?」
 本だったら、「あれ読んだ?」
 映画だったら、「あれ見た?」
 誰かに言いたくなるということは、お客さんが満足したということ。満足して、しかも誰かに自慢したくなるということ。この夜の埼スタの試合は、間違いなく「あれ見た?」と誰かに言いたくなるゲームだった。

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 最後に、堀監督と並ぶ勝利の立役者を挙げておきたい。それは90分間、声を枯らして歌い続けたサポーターたちだ。

 この夜の応援は、いつにも増して迫力があった。タイムアップの瞬間の歓声は、2万6000人のものとは思えないほど大きかった。
 
 勝利の瞬間、私は土曜日に見た光景を思い出した。

 ひどいプレーで柏に敗れた土曜日の試合後、埼スタでは横断幕を持った有志たちが、帰路につくサポーターに向かって「水曜日も埼スタに行こう!」「このままじゃ終われない!」と訴えていた。

 今頃、彼らは感無量だろう。がんばってよかったと心底思っているに違いない。
 
 選手たちはよく「サポーターの声援が力になりました」と言うが、天邪鬼な私はいつも言葉半分に聞いている。だが、この夜は応援が勝利を呼び込んだように思えた。中立の私がそう思うのだから、当事者であるサポーターはその手応えがあるのではないだろうか。

「自分たちの声が届いた……」

 お客さんにそう思わせたら、それは間違いなくプロの仕事だろう。
 
取材・文:熊崎 敬(スポーツライター)
 

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