東京地区の厚板シャー・溶断業者、切板値上げに本腰

採算回復へ「10万円台乗せ」急ぐ

 東京地区の厚板シャー・溶断各社は、切板価格の引き上げに本腰を入れる。総体的な需要環境の回復傾向を追い風に、昨年来のメーカー値上げによる大幅な仕入れ値高騰分の切板販価への転嫁を急ぐ構えだ。地区シャーでは、一般切板(無規格母材ベース、寸法切り、運賃別)でまずはベース=トン10万円の大台に乗せ、そこから次の一段高へとステップアップすることで切板の採算を改善する。

転嫁値上げ、進まず

 国内高炉大手では新日鉄住金が昨年6月積み以降、段階値上げを打ち出し、これまでに累計でトン2万円規模の販価引き上げを実施。新たな追加値上げの意向も示している。

 電炉大手の東京製鉄も、昨年秋時点の6万1千円をボトムに12月契約分から段階的な販価引き上げを実行。直近では先月下旬に売り出した9月契約分で2千円切り上げ、ベース建値をトン7万3千円に改定した。累計の値上げ総額は同1万2千円に達する。

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 他の高炉、電炉および海外主要ミルも厚板販価を順次、切り上げており、流通・シャーの仕入れ値は国内外いずれのソースも大幅に値上がりしている。

 これに対し、シャー段階における一般切板価格への転嫁値上げは著しく遅れているのが実態だ。向け先、顧客別によって転嫁の進捗度合いは異なるが、首都圏の有力シャーによれば「概して数千円程度しか浸透していない」という。

需要回復が「追い風」

 市中における切板需要の長引く停滞や在庫調整の遅れが影響し、薄板に比べて厚板需給はタイト感が乏しく、他の鋼材品種に比べても素材、切板ともに値上げピッチが遅い。

 ただ、建機やトラック向けといった製造業分野が堅調なほか、夏場からようやく建築分野が復調。ここにきて橋梁や土木セグメント向けにも動意が感じられる。当該シャーの受注および工場稼働率は上昇しており、下期からはさらに需要拡大が見込まれている。

 こうした傾向は、時間差こそあれ店売りマーケットにも波及し、末端実需の喚起につながる。すでに一部ではその兆候が出始めているとの手応えも。

「安売り自制」がカギ

 メーカーの店売り分野に対する販売、価格政策は「強気」だ。ある有力シャーでは「販売不振と仕入れ値高で採算環境は悪化しているのに仕入れメーカー(国内高炉)からは新たな追加値上げを〝宣告〟された。抵抗したが通じなかった。もはや売り値に転嫁していくしかない」として顧客との交渉に入っているとのこと。

 供給面から背中を押される格好でいよいよ〝切板値上げ、待ったなし〟の情勢が到来している。需要面の回復・拡大ムードは「追い風」になる。

 あとは「いまだ一部の局地戦で散見される受注確保を優先した同業者間での安値乱売を自制・是正することが、シャー共通の通過目標である『切板トン10万円台乗せ』には不可欠だ」との声が、シャー間で高まっている。

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