【トップインタビュー 古河機械金属・宮川尚久社長】銅事業、最適生産・販売体制を構築 ユニック部門、タイ中心に東南アの需要捕捉

――足元の事業環境と今期の展望から。

 「第1四半期は、おおむね計画通りか少し上振れてスタートできた。産機がやや苦戦したが、それを全体でカバーできている。足元の為替は計画よりやや円高だが、銅価上昇はプラス材料だし、全体としては上期も順調に推移するだろう。ただ、今期は大きな利益を出すことが優先ではなく、基盤固めに重心を置きたいと考えている」

――今期から新中期経営計画がスタートした。まず産機部門の成長戦略をお伺いしたい。

古河機械金属・宮川社長

 「従来からエンジニアリング志向という方針で取り組んできたが、改めて『エンジニア力の強化』を前面に打ち出し、単なる機器メーカーからの脱却と顧客の戦略的パートナーを目指すという基本戦略を掲げた。これは社員の意識改革も含めて取り組む。戦略的パートナーとなるには顧客との関係をより密接にし、さまざまなソリューション提案ができなければならない。それは長期ビジョンで掲げるマーケティング経営につながる部分であり、そういう意識を持ってチャレンジさせたい。一方で陸前高田市の高台移転工事や東京外環道工事の実績でベルトコンベアの製品力が見直され、ゼネコンとの関係も強化されてきた。産機全体として良い方向に向かっていると思う」

――ロックドリル部門については。

 「国内は当面順調に推移するだろう。リニア中央新幹線のトンネル工事向け受注の本格化への備えと、そのための投資も実行に移す段階だ。海外はブラストホールドリル、ドリルジャンボの拡販を図る。ブラストホールドリルは中口径を市場に投入して伸ばしていきたい。ドリルジャンボは中国、東南アジア、南米といった地域で受注が取れ始めてきた。この3地域をベースに海外展開のノウハウを蓄積したい。もう一つは坑内掘りの鉱山。世界的に大規模鉱床が減る中で銅需要はまだまだ伸びる。坑内掘りの案件も増えるだろうし、当社製品はそこで十分に海外勢と勝負できる」

――ユニック部門の成長戦略については。

 「北米や欧州地域も引き続き伸びるとみているが、まずは中近東まで含めたアジア、特に東南アジアに注力する。輸出生産拠点と位置付けるタイを中心に各国の需要を着実に取り込む。現地代理店の育成や当社自身の海外営業力の強化にも努めたい。一方、生産面では佐倉工場のマザー工場化に向けた設備投資を進めている。事務・研修棟の新設などが来春に完成し、その次のステップとして自動化・省人化のような設備投資も考えている。佐倉を要として中国とタイのバックアップ体制を整え、三極生産体制を強化していく」

――機械事業は既存事業の周辺分野などでM&Aを検討している。

 「現中計には織り込んでいないが、長期ビジョンの最終年である25年に間に合えば良いと考えている。すでに各事業会社が上流下流、左右の関連するエリアで事業の取り込みを検討している。例えば機械の周辺部品や制御技術、将来的にはAI(人工知能)やロボット化への対応というテーマもある。産機のエンジニアリング力強化には工事部隊の充実なども選択肢になるかもしれない」

――銅事業で最適生産・販売体制の確立を目指している。

 「現状では共同製錬所で委託製錬している以上に生産を増やすのは難しいし、その能力にあった収益体制が必要だ。そこで採算重視の観点から輸出を減らし、急な注文にも即納できるような小回りの利いた体制・サービスなど細かい改善を積み上げて国内顧客重視の販売体制を構築したい。それができれば自ずと最適生産・販売、利益はついてくるだろう」

――今後の鉱山投資に対する考え方は。

 「短期的には全く考えていない。ただ、長期的に言えば大規模案件が減り、坑内掘りのような案件が増えれば当社が参画できる機会もあるのではないかと思う。坑内掘りはコストがかかるが、品位が上がるというメリットもあるし、当社としては機械のテスト場としての活用も考えられる」

――電子部門の戦略製品であるコイル、窒化アルミの現状は。

 「コイルはフィリピン工場が順調に立ち上がり、中国も含めて安定的な生産体制が構築できた。一方で、今後の競合参入も想定し、競争に勝ち残っていくための製品開発も進めている。窒化アルミは課題の一つだった原料確保の見通しが立ち、取り組みを強化しているので成果が出始めると期待している。特にこの分野は製品のライフサイクルが短いので早く成果を出さなければならない」

――人材基盤の拡充・強化については。

 「事業戦略と人事戦略は両輪と位置付け、昨年に人事戦略の特命部長を置いた。人材育成では全体の底上げだけでなく、次世代を担う経営者育成の取り組みも始めたし、従来の人事制度の抜本的な見直しも進めている。こうしたことが全社的な刺激になることを期待したい。一方で働き方改革と並行して業務改革を推進していくため、業務改革推進室も6月に新設した。業務改革については全社的な業務システムの更新も含め、できるところから進めていきたい」(相楽 孝一)

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