MVP級の活躍で2季ぶり優勝に牽引、サファテを突き動かした雪辱の思い

最後を締めくくるのは、この男しかいなかった。優勝マジックを1として迎えた16日の西武戦(メットライフ)。5点リードの9回、マウンドに上がったのは、ソフトバンクの「キング・オブ・クローザー」デニス・サファテ投手だった。

ソフトバンクのデニス・サファテ【写真:藤浦一都】

工藤監督に続き、仲間の手で5度宙に舞う

 最後を締めくくるのは、この男しかいなかった。優勝マジックを1として迎えた16日の西武戦(メットライフ)。5点リードの9回、マウンドに上がったのは、ソフトバンクの「キング・オブ・クローザー」デニス・サファテ投手だった。

 9回2死二、三塁から外崎に中前へ2点適時打を許したものの、そんなものはお構いなし。最後は代打メヒアを三ゴロに仕留めて、歓喜の瞬間を迎えた。マウンド上で両手を突き上げ、ガッツポーズ。それを中心にして、歓喜の輪が広がった。

「2点は取られたけど、今までの中で最も悔しくない2点だった。3つのアウトが取れて良かった」

 工藤公康監督を7度胴上げをすると、仲間達の手で担ぎ上げられた。1度、2度……。5度、宙を舞った。「予想していなかったけど、嬉しかったよ。僕は結構体重があるから大丈夫かなと思ったけど、うちのチームは力のある選手たちなので、大丈夫だったね」と笑顔が弾けた。

 この男なくして、この優勝は語れない。今季の働きぶりを見れば、文句なしのMVP最有力候補だろう。

 今季、守護神が打ち立てた数々の記録は凄まじい。プロ野球新記録となるシーズン47セーブを打ち立てると、史上初となる50セーブにも到達。外国人最多セーブ記録を更新する178セーブを挙げ、外国人初となる通算200セーブも達成した。4年連続30セーブ、3年連続40セーブは中日・岩瀬仁紀に次ぐ史上2人目。パ・リーグ新記録となる18試合連続セーブとし、これは現在も継続中。歴史的な活躍を見せたシーズンとなった。

 今季の成績も、驚異的だ。この日を含めて63試合に投げ、2勝2敗3ホールド51セーブ。今季の失点はわずか8。防御率は1.14で、63イニングしか投げていないのに、奪三振は99個。奪三振率は14を軽く超える。今季の奪三振ランクでは、並み居る先発投手に混じり、ロッテ涌井秀章に続くリーグ12位に位置している。セーブ機会での失敗は、わずか1度だけ。文字通り鉄壁の守護神として君臨し続けた。

ウイニングボールは王会長へ「このチームを作り上げてきたのは王会長」

「チームが優勝できたことが全て。記録は個人のこと。チームメート、監督、コーチに感謝しているし、チームが強いということを証明できたのは嬉しい」と、自身の記録はそっちのけで、優勝のために力を注いできたサファテ。試合後のウイニングボールは、全員とのハイタッチを終えると、王貞治球団会長の下へ歩み寄り、手渡した。「王会長あってのチーム。会長が来られているなら、会長に渡さないといけないと思っていた。このチームを作り上げてきたのは王会長だからね」と語った。

 このサファテ、グラウンドを離れても“男前”だ。2015年に始めた東日本大震災の復興支援チャリティー活動は、今季で3年目を迎えた。1セーブにつき10万円を寄付する活動で、過去2年で総額は840万円に上り、今季を合わせれば、計1000万円を悠に越える。2016年に起きた熊本地震の際には、被災地の子供達をヤフオクドームへと招待し、震災や今年起きた九州北部豪雨に際して球団が実施した義援金募金活動には、必ずと言っていいほど募金箱の前に立った。率先して社会貢献活動に取り組む姿は、アスリートの鏡と言っていいだろう。

 日本ハムに大逆転でリーグ優勝をかっさらわれた昨季。同点の場面での登板だけで7敗を喫したサファテは、V逸の責任を一身に背負い込んだ。「優勝を逃したのは自分のせい」と悔やみ、36歳にして一段と成長した姿を今季示した。その屈辱を晴らす戴冠に「去年の借りを返せて嬉しかった。さらに強いチームになって帰ってこられた。我々の強さを証明できて良かった」と言葉に力を込めた。2年ぶりのリーグ優勝。絶対守護神もまた、昨季の雪辱を果たした1人だった。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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