【新社長インタビュー】〈UACJ金属加工・竹川幸男氏〉自動車部品への取り組み強化 UACJ押出加工との連携加速

――就任に当たって、まず抱負を教えてください。

 「まず第一に、従業員がやりがいを持って仕事ができる環境づくりに取り組んでいきたい。歴史ある三つの企業が統合した会社なので、生産する加工品のラインアップも幅広い。製造ノウハウや技術力を生かしてナンバーワン、オンリーワンの製品を一つでも多く生み出していきたい」

――足元の国内の事業環境は。

UACJ金属加工・竹川社長

 「建材製品は、東京オリンピックから派生する需要の盛り上がりが弱く、目先は我慢が必要だろう。工芸・施設関連は、主力の納骨壇需要の変化を見極めていく。今後は寺社と連携して供養の方法をプロデュースすることも視野に入れたい。産業機器は市場が広がらない中で、製造方法や仕組みを改善することで業界内でのシェアを伸ばすことが可能だと考えている。産業機器分野では、合理化と工夫で利益を倍以上に伸ばしていきたい」

――現行の中期計画では〝自動車〟と〝熱ビジネス〟がテーマです。進ちょくは。

 「自動車では広島工場で構造部材、恵那工場でエンジン回りの部材の量産が始まった。このほかにも内装関係の部材生産も始まっており、当初描いた地図を実現できている。自動車でテーマとなる異材接合はこれからグループで取り組んでいきたい。熱ビジネスでは今年から仙台工場でEV・HV用冷却器部品の量産がスタートしている」

――北米では軽量化ニーズが拡大しています。

 「北米には三つの工場が立地しているが、16年にホワイトホール社(UWH)がUACJグループに入ったので、協業できることを探していきたい」

――アジアはいかがですか。

 「冷蔵庫用冷却器を手掛けるタイは洪水で低迷した受注をようやく回復したところ。家電用ヒートシンクのインドネシアは、人件費の上昇もあり難しい部分もある。この2拠点については早期に新しい加工品の柱を見つける必要がありそうだ。農機具部品や自動車ヒーターのロウ付けフィンを造っている中国では、〝自動車のEV化〟の波には絶対に乗りたいと考えている」

――設備投資の計画は。

 「国内では大きなものは考えていない。最適拠点生産のための設備移設などはあるかもしれないが、それも含めて将来像を模索している段階。海外では自動車用スチール部材のプレスを手掛けるセントラルメキシコで、溶接やアセンブリまで仕事の幅を広げていければいいと考えている。メキシコ以外ではEV市場が急拡大している中国で新しい自動車部品の加工を始めていきたい」

――UACJグループでの連携は。

 「北米でUWHと協業することはもちろんだが、自動車部品への取り組みを強化していくためには押出と加工品がより密接に連携していく必要がある。UACJ押出加工とは会社の形にとらわれず、UWHのように素材から加工品まで一貫生産できるような仕組み作りを進めていく」(遊佐 鉄平)

プロフィール

 住友軽金属工業に入社後は約28年にわたってアルミ押出の設備や製造畑を歩んだ。名古屋製造所で形工場長を務めたほか、チェコやタイ・アユタヤの工場立ち上げ・計画にも携わった。UACJ発足前に加工品部門へ籍を移し、旧ナルコ岩井と旧ニッケイ加工、旧ナルコ恵那の統合を推進した。趣味は農作業と日曜大工で、「日曜大工のいい道具をそろえ(てしまっ)たので、これから長く付き合っていきたい」と笑う。信条は「巧遅拙速」と「凡事徹底」。

略歴

 竹川 幸男氏(たけかわ・ゆきお)1984年(昭59)立命館大理工学部卒、住友軽金属工業入社。2010年住軽テクノ名古屋社長、11年住軽テクノ恵那社長、13年ナルコ恵那社長、15年ナルコ岩井専務取締役、16年UACJ執行役員兼UACJ金属加工副社長を経て17年6月から現職。59年12月29日生まれ、57歳。愛知県出身。

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