【品種別戦略】〈JFEスチール鋼管センター長・浜野晃彦専務(4)〉油井管、中近東・北アフリカに照準 京浜の純亜鉛めっき設備本稼働

――鋼管センターで取り扱う品種の主要マーケット環境について。

 「エネルギー分野では、油井管の需要環境は厳しい状況が続いているが、昨年底を打ち、少しずつ回復基調にある。最大需要地である北米では在庫調整が進み、価格も上昇基調。今後原油価格が1バレル50ドル前後で推移すると想定される中、下期以降も回復傾向が続きそうだ。特殊管は新興国の旺盛な発電需要に支えられているが、ファブ間での競争が激しく、価格競争も厳しい状況。継目無(シームレス)鋼管や電縫鋼管のラインパイプ案件はプロジェクトの見直しなどが散見され、需要は盛り上がっていない」

JFEスチール鋼管センター長・浜野専務

 「建材分野は昨年に引き続いて物流倉庫・工場などの設備投資案件も底堅いとみているが、配管類の荷動きはまだ鈍い。今後、首都圏を中心とした東京五輪関連や再開発案件などに期待。地域によってかなり温度差があるが、来夏くらいからピークで、その後数年間は堅調な需要が見込めそうだ」

 「国内では年初から値上げ活動を地道に行っている。流通や需要家から一定の理解は得られていると思うが、引き続き適正在庫水準維持、実需見合いの生産を継続し、値上げの早期浸透を目指していく」

――油井管事業では、特殊ねじ継手の分野などで海外ミル・加工業とのアライアンス強化で拡販を展開してきた。足元の状況と今後の戦略は。

 「油井管の特殊ねじについては、現地ミル・工場にラインセンスを供与して拡販するという基本戦略は変わらない。特に今後注力していきたいのは、潜在的な需要が見込める中近東と北アフリカ。ドバイ事務所には専門技師を1人増員するなど体制を強化している。ミルや加工業者の業態などをよく精査しながら、提携先を選定していく」

 「中国では成都鋼バナジウム有限公司(CSST)との合弁を解消し、現在新たなパートナーを模索中。いろいろな選択肢はあるが、既存の提携しているメーカーや商社の強み弱みなどを考慮しながら、提携先を決めたい」

――今期は中計最終年だが、今中計で注力してきた活動の進ちょく状況と今後の見通しは。

 「技術・新商品開発面では、油井管の特殊ねじ継手のラインアップを拡充してきた。また高強度サワー材『JFE―125S』を昨年市場投入。今期以降も開発活動を継続する。建材分野では肉厚28ミリのロールコラム、自動車分野では細径・厚肉・高加工性のHISTORY(ヒストリー)鋼管をそれぞれ国内外で拡販。同分野ではラインアップ拡充や新商品開発も続けていく。配管分野では、京浜地区の鋼管用純亜鉛めっき設備を立ち上げている。JFEスチールグループが製造・出荷する亜鉛めっき鋼管はすべて鉛を含まない純亜鉛めっき鋼管とすることにより、拡販を図る」

 「エネルギー需要に対応した受注活動としては、油井管分野の技術サービス事業組織『JFE―TC』の機能強化を継続。各地で顧客との技術ミーティングなどを通し、顧客の需要を開拓していく。国内の営業面では、商社への業務一部移管体制の見直しを進めてきた。地域顧客ニーズに合わせて、鋼管営業の専属要員を配置。現在は東京と大阪、名古屋、福岡に配置しているが、今後も顧客のニーズに耳を傾けていく。地域にある当社系の鋼管会などの組織も有効活用していきたい」(11月にJFEスチールが主催する全国鋼管会を開催する予定)

――国内外の主要グループ会社について。

 「今年4月にJFE鋼管と川崎鋼管が統合してJFE溶接鋼管が発足。鋼管センターが軸となって戦略の共有、情報交換なども積極的に行っており、顧客からも理解を得られていると思う。10月には予定通り知多製造所の小径ミルを統合。各ミルの特徴を生かした最適生産体制を構築していく」

 「JFEグループとして自動車鋼管分野で初の海外事業である中国の嘉興JFE精密鋼管(JJP)も稼働から2年が経ち、少しずつ数量が増えてきた。世界最大の自動車市場で、グループの造管技術を活用して実績を積み上げていきたい」(後藤 隆博)

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