誰もが"話せる"まちへ

 雲仙市は、手話への理解や使いやすい環境整備を目指す「手話言語条例」の来年度中の制定を目指し、準備を進めている。市内の手話サークル関係者は「聴覚障害者への理解が深まり、みんなが暮らしやすいまちへ前進する」と期待する。

 同条例は手話を言語と位置付け、聴覚障害の有無にかかわらず誰もが安心して暮らせる社会を目指す。鳥取県が2013年に初めて制定。8月1日現在、全国101自治体に同様の条例がある。市福祉課によると、県内では諫早市が来年4月施行を目指し、長崎、大村両市も準備を進めているという。

 雲仙市は条例制定で市民への啓発活動を強化していく方針。現在、1人しかいない市専任手話通訳者の育成や増員も視野に、公共施設での手話サポートを強化していく考えだ。今後、市身体障害者福祉協会などの関係団体と協議を進め、金澤秀三郎市長は「手話はコミュニケーションを図る重要な『言葉』。前向きに取り組みたい」と話す。

 市内唯一の手話サークル「うんぜん」の副会長で、市専任手話通訳者の桶本寿美子さん(59)によると、戦前からろう教育は相手の口の動きを読み取る「口話法」が主流だった。数年前まで、高齢の聴覚障害者の中には「手話は恥ずかしい」と隠れて使う人も多かったという。

 同サークルは市民向けの手話勉強会のほか、聴覚障害者と一緒に災害時の避難経路を確認するなど活動を続けてきた。桶本さんは「条例で環境を整え、聞こえない人もそうでない人も、みんなが手話を使って話ができる市になってほしい」と期待する。

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