「地獄」へようこそ、南阿蘇の老舗温泉旅館が再建へ

熊本地震から1年5カ月、世間では話題には上らなくなりつつある今も復興作業は続いている。地震と土石流の大きな被害を受けた南阿蘇地区、そのシンボルである地獄温泉で「よみがえりプロジェクト」が始まった。(文・写真=福地 波宇郎)

今も泥が積もる温泉の休憩所

江戸時代から200年の歴史を誇る地獄温泉・清風荘。古くは侍たちがやってきた湯治場も土石流が押し寄せ、建物のほとんどが被害を受けた。ようやく公費解体が始まることとなり、被災当時からボランティアに入った緊急支援団体OPEN JAPANと清風荘にゆかりのある人々が、今も通行止めで時が止まっていた旅館の片づけに取り掛かった。

呼びかけに応え全国から集まったボランティア

当主の河津誠さん(55)の指示のもと、土砂に埋まっていた部屋、そしてその場に残っていた家具や道具が掘り出されていく。

「私の左手には過去の200年、右手には未来の200年が握られているんです。それはここに産まれたものには自然な感覚なんですよ」。家族で経営する清風荘。ここが復活すれば地域も活性化するという使命感を持ちながらひたすらに復興への道を歩み続けている。

熊本地震、九州北部豪雨、そして今回の台風による大分水害。それにとどまらず、今も広がる被災各地でこのような取り組みは続いている。復興のいちばんの妨げは人々の記憶から忘れ去られること。今この時も土砂をかき、家を片付け、生活を建てなおそうとしている人たちがいることを覚えていてほしい。

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