【三菱マテリアルの新中期経営戦略(下)】〈竹内章社長に聞く〉出資銅鉱山からの調達比率、33%から50%超に 銅加工事業、海外会社の買収効果最大化

――ペルーのサフラナル・プロジェクトの進捗と鉱山投資の考え方については。

 「サフラナルは昨年5月にプレFSが終わり、今年から正式なFSに入った。現状では19年の中ごろに建設を開始し、22年をめどに操業を始めたいと考えている。鉱山投資について言えば、鉱石の安定調達の観点から中長期的には出資鉱山からの調達比率を現状の33%から50%以上に高めたい」

 「一方で独力の鉱山開発は人的、資金的にも難しい。このため、投資条件として信頼できるパートナーであること、十分な山命を有していること、経済的利益に見合う低コストの鉱山という三つを設定し、その条件で優良案件があれば積極的に進めたい。サフラナル以外でも常に複数案件を検討しており、対象地域としては米州、豪州の優先度が高いと考えている」

――E―スクラップ処理を拡大させている。

 「14年に米国での集荷体制を整え、昨年には直島製錬所で増処理設備が完成した。これで直島と小名浜製錬を合わせた処理能力は世界トップの年間14万トンとなった。足元では欧州からの増集荷を目的としてオランダに回収拠点を建設しており、10月には稼働を開始する見通しだ。欧州からの集荷が増加すれば操業形態の変更で国内の現有設備でも年間16万トンまでは処理できる。さらに20年までには国内に増処理投資を行い、年間20万トンまで処理できるようにしたい」

――銅加工ではルバータ社とのシナジー最大化もテーマです。

 「買収完了前から人員を派遣して諸準備に当たらせ、具体的なシナジーの検討も始めている。また、ルバータに当社の関連工場を見学してもらうなど相互交流も行っている。ルバータの製品と三菱伸銅を含めた当社の銅加工の製品はあまり重複がないため、ルバータの世界規模の販売網と、日系や東南アジアの顧客に強みを持つ当社の販売網を相互活用することでお互いの拡販が図れるという期待がある。技術的な面でも当社が強みを持つ合金技術を活用し、ルバータの新製品開発・製造につなげたい。そういう意味では開発、製造、販売のあらゆる面でシナジーが出る可能性が高い。また、地金や各種資材の共同購買、輸送などサービスプロバイダーの見直しなどでのコスト削減も図れると期待している」

――加工事業の成長戦略については。

 「昨今は顧客の要求も多様化しているため、顧客ごとの課題に対応するソリューション提供力強化の施策を進めている。その一つとして営業部隊を産業別チームに編成し直した。特に注力しているのが航空機分野で、昨年新設した航空宇宙部を中心に、共同研究などを通じた顧客との密接な関係構築を図っている。二つ目は利用技術支援や教育研修などのソリューションを提供するテクニカルセンターのさらなる拡充だ。6月に国内2拠点目が完成し、海外でも中国のセンターを2倍の規模に移転拡張した。今後は、教育用資料やデータの共有などセンター間の連携も強めていく」

 「海外の製造販売拠点の拡充については、販売拠点を前中計期間に中国で6カ所、ベトナム、トルコ、インドで1カ所ずつ新設し、今年度も中国にさらに2カ所新設したい。生産拠点は前中計期間に米国、スペイン、インドネシアで生産能力の増強や生産品目の追加などを行った。今年に入ってそうした施策効果が出てきており、国内拠点も好調な状況が続いている」

――電子材料事業については。

 「この分野は技術革新が速いため、常に新しい製品を開発していかないと利益を維持できない。そういう意味では加工と同様にソリューション提案型の営業が求められる。マーケティングを含めた営業と開発、製造が三位一体となってユーザーに接し、新製品を迅速に開発するという体制整備を進めている。また、次世代自動車やIoTなど最新分野で使われる製品が多いので、そうした技術革新に見合った製品開発を迅速に行い、製品ラインアップを拡充させながら伸ばしていきたい」

――アルミ事業の今後の展開は。

 「三菱アルミについては選択と集中をより推進し、自動車用の熱交材に注力する。強みのある押出製品の多穴管は引き続き強化するが、一方で熱交材が板材にシフトする傾向があるため、板材の拡充も考えている。その一環として、他社と提携して北米での工場新設を検討中だ。アルミ缶は昨年に結城工場でボトル缶の増産設備が完成したが、今後もボトル缶は成長が期待できるため、岐阜工場でのボトル缶の増産を決めた。ボトル缶は魅力的な市場なので競合の参入など競争は激しくなるだろうが、当社には技術的な優位性などの強みがあると考えている」

 「缶化率の上昇や新製品の創出などで増える分はあるだろうが、中長期的には少子高齢化の進行でアルミ缶も国内市場は縮小するだろうし、従来から海外展開は検討している。具体的には決まっていないが、アジアをターゲットにパートナー候補も挙がりつつある」(相楽 孝一)

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