痛みがない歯の変色は、神経の突然死!?

虫歯のような痛みはないのに、気になる歯のくすみ。変色した歯は、神経が自然死していることがあります。

黒? 茶色? なんとなく気になるくすんだ歯・歯の変色

最近ちょっと歯の色が気になるなぁ……。神経を取ったわけでもないのに、どうしてこの1本だけ色が違うんだろう? そんな風に思って歯科に行くと、歯の神経が死んでいるとのこと。

歯の神経が死んでいるとは、一体どのような状態のことをいうのでしょうか? 歯の神経の自然死について、原因・リスクを歯科医が詳しく解説します。

歯の神経が自然死する原因……痛みがなく自覚症状がない場合も

一般的には、歯の内部にある「歯髄」と呼ばれる組織全体が、機能しなくなった状態をいいます。痛みがほとんど起こらないで、歯の内部の歯髄が死んでしまう自然死は、主に次のようなことが原因です。

以前の治療の影響

比較的多く見られるのが、以前虫歯の治療の際、神経にごく近いところまで、虫歯が進行していたが、その時は歯の神経を取らずに保存して、詰め物などで穴を埋めてある場合。

治療後に神経近くに潜伏していたごく少量の虫歯菌によってゆっくりと歯の神経を蝕むため、それほど痛みを感じずに数年後に神経が死んでいることがあります。

打撲など機械的刺激の影響

口元を強く打ち付けたり、物がぶつかったりして、歯に強い衝撃が加わったりすると、その時は痛みが落ち着いたとしても、しばらくしてから神経が死ぬことがあります。

歯の神経が機能しなくなると、歯自体の痛みは感じなくなるので、自覚症状がなくなります。しかし、ほかの歯に比べて、色が変色したように暗く、表面がくすんだようになるなど、歯の神経を取った時と同じような色の変化が起こってきます。

歯の神経の死を放置するリスク……突然強い痛みが出る可能性も

自覚症状がほとんどないため、自分で気がつくことは少なく、歯の表面の色が気になって、病院を訪れた際にレントゲン撮影で、初めて発見されることがほとんどです。

普通、歯の内部の神経などが入っている空間は、歯髄でしっかり満たされていますが、歯の神経が死んでいると空間はそのままで、神経が溶けて液状化したり、逆に乾いて凝固したり容積が減少します。

その際、歯の内部にできた空間が感染を起こすと急に痛みが生じたり、歯の根の先に、袋状の膿みだまりができたりします。

実際の臨床では、神経が死んでいるのが確認できた時は、すでに膿などが内部に溜まっていることが多いので、痛みがなかったとしても歯の内部に穴を空けて腐っている神経の残骸を綺麗に取り除き、内部を無菌化して埋める必要があります。

痛みがないからといって放置をしておくと、ゆっくりと慢性状態で炎症が進行し、根の先に大量の膿を溜め込みます。

そしてある日、体調不良や機械的刺激など少しのきっかけで、それまでの痛みのない慢性状態から、強い痛みや腫れを伴う急性状態へと変化することがあるので注意が必要です。

丸山 和弘プロフィール

1995年より臨床一筋の現役歯科医師。歯科大学卒業後、仙台市東邦歯科診療所を経て地域密着型の歯科医師に。小さな子どもの虫歯予防から歯のホワイトニング、お年寄りの入れ歯の相談まで、数多くの症例と日々向き合いながら、虫歯、親知らず、口内炎、歯周病など、歯の健康を守るための情報を数多く発信している。

(文:丸山 和弘(歯科医))

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