【解説】〈三井物産から日鉄住金物産への事業譲渡〉日鉄住金物産、三井から人員移籍へ

鉄鋼流通で存在感高まる、薄板建材、業界地図に変化も

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 三井物産の新日鉄住金における取り扱いシェアはここ数年やや低下していたが、日鉄住金物産を合わせるとシェアは全体の4割に迫る規模になる。三井物産の幹部は「国内コイルセンター(CC)協業での信頼関係などを基盤とし、さらに連携を深めていきたい」としており、思い切った事業モデルの転換を進める。

 三井物産本体は、自動車部品大手ゲシュタンプ社およびグループ会社のGRIとの事業、、米合弁CCのスチールテック、中国宝鋼との合弁CCなど総合商社らしい資金力や総合力を生かした事業を核に、それら企業とのパートナーシップを通じた周辺物流を狙うなど、経営資源を振り向けて「鉄の需要を創り出し、サプライチェーンの、ユーザー側に重心をうつして主導権を発揮する」方針を打ち出している。

 一方で日鉄住金物産は、今回のスキームにより鉄鋼のトレーディングを強化できるメリットがある。「鉄鋼事業の補強と効率化がポイント」(同社幹部)としている。新日鉄住金が日新製鋼を子会社化したタイミングとも重なるため、新日鉄住金材に加え、日新製鋼材も移管されることになるとみられる。

 事業移管で注目されるのは薄板建材の中でもカラー鋼板の分野。三井物産が長い歴史の中で「準窓(準窓口問屋)」と呼ばれる二次流通を束ねて新日鉄住金グループ材(日鉄住金鋼板材)を販売してきた分野だが、日鉄住金物産との協業・連携の中で商流がどう変化するのか。この分野は日新製鋼材も強いゾーンとなり、それらが集結すれば業界地図に一定の変化が起こる可能性もありそうだ。

 三井物産の鉄鋼製品事業を見る上での今後の注目点は、三井物産スチール(MBS)がどういう企業になるのか。建材分野は既にエムエム建材に外出し(分社化)しており、今回の移管で取扱い数量はさらに縮小する。

 MBSは、依然新日鉄住金材を主体としながら、JFEスチールや神戸製鋼所、日本製鋼所など他の鉄鋼メーカーとの取引もある。大きく舵を切った三井物産・鉄鋼製品事業の中で、どういう存在意義のもとに、どういう役割と機能を果たしていくか注目されるが、これについて三井の幹部は「裾野の広い鉄鋼製品事業の中でのアンテナ機能、三井のグローバル拠点・資産を繋いで機能発揮する重要な実働部隊」と明言する。

 今回の動きについて他商社の首脳は「三井は名をとり、日鉄住金物産は実をとった」「総合商社系の戦略としては正しい選択。当社は中途半端であり、うらやましい」など受け止めは様々。

 来年4月には、住友商事が子会社(住友商事グローバルメタルズ)に金属事業の大半の取引を移管する予定となっている。最後まで総合商社の本体に鋼材トレーディング部門を大きく構えていた住友商事が、子会社に事業を大幅移管するのは一つの節目となる。「総合商社の時代」から「鉄鋼専門商社の時代」に移る流れが加速しそうだ。

 世界鉄鋼メーカーの競争は激しくなる中で、メーカー各社は売る力を強化しようとしている。そこで総合商社系・メーカー系・独立系、ユーザー系など各商社がどういう機能を発揮し、役割を果たしていくのか。さらなる再編の行方と併せて、各社ごとの持ち味を生かした戦略に注目が集まる。(一柳 朋紀)