【トップインタビュー 三井金属・西田計治社長】銅箔など拡大市場に投資 価格上昇で亜鉛鉱山に追い風

――4~6月期が大幅な増益となり、順調な滑り出しとなった。

 「機能材料が堅調に推移していることから上期の業績予想も上方修正し、経常利益は前回予想比で35億円増の150億円に引き上げた。特に高機能銅箔『マイクロ・シン』の増販が業績を押し上げている。マイクロ・シンは従来用途に加え、新しい用途も広がりつつあるので18年、19年をにらんだ投資も並行して準備している」

――亜鉛価格が高値圏で推移しています。

三井金属・西田社長

 「昨年来言われてきた通り、鉱石需給がタイトになり、LME(ロンドン金属取引所)価格が10年ぶりとなる3千ドル台で推移している。鉱石需給は当面タイトに推移するという見方が大勢なので、今年度内は大きく崩れないと思うが、その先は予想できないというのが正直なところだ」

――中期経営計画の進ちょく状況は。

 「社内では中計2年目である今年の出来が今中計の帰趨を決すると話している。前中計で種まきをした案件の収穫、既存事業の基盤強化、将来への布石づくりという三つの方針の下でさまざまな施策を進めており、ここまではおおむね想定通り。将来への布石づくりで例を挙げると、昨年に全固体電池の取り組みを公表したが、こうした話が出せるようになってきたこと自体が重点施策の進ちょくが順調だという証だと考えている」

――機能材料事業は前期で中計の利益目標を前倒し達成した。

 「電子材料分野は波が激しく、需要の山谷を繰り返しながらトレンドが形成される。その中で例えば銅箔や大型液晶パネル向けのITOなども足元では好調だが、どこかで調整は入ると思う。したがって目標を超過達成しているという認識はなく、現状では中計目標の修正も考えていない」

――銅箔事業の好調さが目立ちます。

 「銅箔やSAWフィルター向けの五酸化タンタルもそうだが、伸びるアプリケーションに使われる材料に投資して成長するという方針に変わりはない。その中で銅箔はいくつか増産投資を発表したが、足元では電気自動車向けの立ち上がりやスマホ向けの活況などで銅箔市場全体が好調だ。当社はマレーシア工場にまだ増産余地があり、拡張しやすいポジションにあるということも強み。マイクロ・シンは将来的にさらなる増産も検討しているが、当社が高いシェアを有している以上、需要のピークが来た時にも供給できる体制を整えておく必要があるということだ」

――触媒事業については。

 「二輪向けの高いシェアを維持しつつ、四輪向けの拡販に取り組んでいる。四輪向けは量産を開始している日本、米国のほかに二輪向けの拠点があるインド、中国、インドネシアに先行投資して生産設備を整えた段階だ。これは顧客のいわゆるグローバルカーの展開による広がりを期待しているものだが、収益への貢献は19年以降になるだろう」

――リサイクル製錬ネットワークの取り組みを強化している。

 「製錬所のネットワークを活用しながら、多種多様な原料を投入してアウトプットを増やすこと、その中でもリサイクル原料比率を上げることに取り組んでいるが、本格的な収益貢献にはもう少し時間がかかると思う。リサイクル原料の増集荷については亜鉛系、鉛系は順調だが、銅・貴金属系は集荷競争の激化でやや厳しい状況だ」

 「リサイクル原料の増処理では、新たな不純物なども入ってくるため、それをいかに処理するかも課題。足元ではやや苦戦しているが、じきにキャッチアップしていくとみている」

――バーゼル法の改正法が公布された。

 「施行前なので効果が出るのはこれからだが、特に問題となっていた廃鉛蓄電池の海外流出と輸出先での環境上不適正な処理を防ぐという点での意義は大きい。リサイクル原料輸入手続きの緩和についても非鉄金属のリサイクルを扱う側としては非常にありがたい改正だ」

――ペルーで操業している亜鉛鉱山の現状については。

 「ワンサラ、パルカという二つの鉱山については亜鉛価格の上昇で追い風が吹いている。価格低迷時に操業を停めていたパルカも2月から再開できた。両鉱山からの鉱石調達量は10%ほどなので収益に大きく寄与するということではないが、操業がやりやすい環境になったという点では良いことだ」

――亜鉛探鉱の進ちょくについては。

 「ワンサラの近隣鉱区での探鉱は継続している。ただ、それよりもワンサラの深部鉱体の開発が先になる。現状では近隣鉱区の探鉱のスピードを上げることは考えていない。規模から考えてもワンサラの深部、パルカの再開を我々のペースで進めながらどういったスケジュールで行うかを考えていく」

――自動車機器事業の状況は。

 「メキシコ工場の主力拠点化に取り組んでいることと、これまで入れていなかった米国のビッグスリーや中国の民族系への拡販を進めており、これについてはかなり手応えを感じている。ただ、成果が出てくるのは次期中計の19年や20年ということになるだろう」(相楽 孝一)

© 株式会社鉄鋼新聞社