SiC基板製造の「サイコックス」、住友金属鉱山が子会社化 基板事業強化、次世代車向け拡販

 住友金属鉱山は3日、加賀電子の子会社で、パワー半導体用SiC(炭化ケイ素)基板を開発・製造するサイコックスの株式51%を取得、子会社化することで合意し、株式譲渡契約および合弁契約を締結したと発表した。電気自動車など次世代自動車の普及に向けた動きが加速する中、市場拡大が見込まれるSiC基板の量産化に向けた検証を促進し、3年後をめどに量産プラント建設などを検討する。株式譲渡および合弁開始は30日を予定。

 サイコックスは、接合技術を応用したSiC基板の製造技術を保有する開発会社。同社の基板はSiC多結晶基板上にSiC単結晶基板を薄く接合して製造するもので、高価な単結晶基板の使用量を減らすことで基板コストを大幅に低減できるのが特長。同基板を用いて作成された半導体デバイスは、単結晶単体で構成されたSiC基板と同様の製造プロセスを用い、同等のデバイス特性が得られる。

 住友金属鉱山は独自の低コスト化技術を有するサイコックスと協業することでSiC基板事業への参画スピードを早める効果を見込む。今後はサイコックスのSiC基板製造技術と住友金属鉱山の基板生産技術を融合させることでSiC基板の量産検証を促進するとともに、加賀電子のエレクトロニクス分野における情報収集力と販売網を活用した展開を図る。

 SiCは、主に電力を制御する用途で使用される半導体材料。ハイブリッド車や電気自動車などの駆動制御装置で要求される大容量領域(大電流・高耐電圧)でエネルギー損失を低減できる材料として市場拡大が見込まれている。

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