【アルコニックスの今期展望】〈正木英逸社長インタビュー〉製造事業利益6割超に M&Aで一層の成長目指す

 非鉄商社機能に製造業を融合した〝非鉄金属の総合企業〟への歩みを加速させているアルコニックスは、足元で好決算を記録している。先月末に上期決算予想を上方修正した同社の今期展望を正木英逸社長に聞いた。(遊佐 鉄平)

――4~6月期業績は売上高586億100万円(前年同期比22・6%増)、経常利益19億4800万円(同79・8%)で好決算でした。

アルコニックス・「正木社長

 「収益をけん引したのは製造分野だ。特に半導体実装機(チップマウンター)用部品の製造を手掛けている研削加工の大羽精研と、半導体製造装置、有機EL関連部品の切削加工を手掛けている大川電機製作所の2社に対しては多くの受注が寄せられている。今年度から連結化した富士プレスも含め、六つの製造子会社は全社が黒字だ。経常利益に対する製造分野の貢献度が64・4%まで高まっており、今後もさらに上昇するとみている」

 「商社流通分野も、円安や非鉄市況の上昇という事業環境の好転という中で全般に堅調だった。銅・アルミ原料関係は営業力の強化にも取り組んだことで収益が改善した。アルミ圧延品は缶材や自動車材、伸銅品も板条を中心に動きは悪くない。電子材料についても、製造業のIoT推進によって販売量は堅調。一方でレアメタル・レアアースは、第1四半期は市況が低迷した」

――上期決算を経常利益37億5千万円(前回発表は24億円)に上方修正しました。

 「製造業の好決算が上方修正の主な要因。大羽精研と大川電機製作所はもちろんだが、原料価格の上昇でめっき材料を手掛けるユニバーティカルの収益が向上しているほか、非破壊検査のマークテックも主力販売先の鉄鋼業界が上向いている。製造各社を取り巻く環境が大きく変化することは考えにくく、下期も現行ペースを歩むと期待している」

――現行の3カ年中期計画では20年に経常利益65億円を目指しています。

 「通期の見通しは現在精査中だが上期予想数値が37億5千万円ということを考えれば、計画数値を今期中に達成できる可能性も否定できない。もともと今期予想の49億円と65億円の差額16億円は、M&Aによる規模拡大を前提としていたので、足元の状況は非常にポジティブだ」

――改めてM&Aや事業投資に対する考え方を。

 「3年間で250億円という投資枠を設定しているが、全額投資したとしてもネットDEレシオは1・0~1・3倍に収まるので大きな負担にはならない。一方で投資によるリターンは10%以上が前提。これによりROEを安定的に13%以上まで高めることができると期待している」

 「投資をする上で〝グローバル〟〝ニッチ〟〝トップ〟の三つのキーワードを重要視している。このテーマに沿うものであれば国内外を問わない。また非鉄金属という枠にも拘泥しない。日本では事業承継の問題を抱えている優良な製造業が多く存在しているため、そういった企業がアルコニックスグループに加わることで、ともに飛躍できるようにしていきたい」

――現在計画中の案件などは。

 「すでに富士プレスの買収などに30億円程度投資しているが、まだ投資枠は220億円程度残っている。M&Aは一件当たり大きくても100億円。いくつか水面下で検討しているものはあるが今期中の実現は未知数。また事業投資分野では、まずは富士プレス関連の中国やメキシコでの事業を拡大できないかと考えている」

――製造分野では設備増強を相次いで計画しています。

 「大羽精研や大川電機製作所では、受注拡大に対応するため工場増築と設備増強をすでに決めた。ともに来春までには稼働を始めるだろう。この分野はIoT推進やAI化に加えて自動車の電装化、電気自動車市場の急成長などによって高機能な製造装置需要が旺盛で今後も需要環境は良い。この波を取り込むためにも、必要な投資は随時実行していく」

 「また、これからは新規分野のM&Aだけではなく、製造子会社がそれぞれのマーケットでシェアを高められるようなM&Aも積極的に考えていく」

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