【新社長インタビュー】〈ジオスター・端山真吾氏〉「プレキャスト製品」を積極展開旺盛な需要捕捉 ニーズに対応新製品投入

――社長就任の抱負から。

 「ジオスターは新日鉄住金グループの中でも土木分野で且つインフラ整備に使用するコンクリート製品が主体というやや異色な存在。私にとっても新しい世界に挑戦できる楽しみとやりがいを持てる会社である。当社は2011年の東京エコン建鉄との合併により、コンクリートと鉄とその両者の優位点を組み合わせたハイブリッド商品までを生産する体制を整えた。第3の創業期とも言うべきこの時期に栗山実則前社長が築き上げた業界での存在感や事業拡大の実績をどう引き継いでいくか、身の引き締まる思いでもある」

ジオスター・端山社長

 「社長就任時には社員が会社に誇りを持ち、社会からリスペクトされ信頼される会社となるよう『安全・コンプライアンスの徹底』『個々人の成長と変化への対応力』『チームワークの最大化』を課題として申し上げた。当社は合併やその後の積極採用を経た歴史から様々なバックボーンや価値観を有する人材の集合体となっており、これが結集すれば非常に力となる。対話を重ね、時間をかけて社内体制を強化していきたい。組織的・歴史的に一枚岩ではない部分があったが、この数年の取り組みで着実に業務基盤が整備されてきた。ジオスターの高いポテンシャルを実力に変えるには個々人のレベルアップと組織で仕事を進めることが大切。技術力・営業力・商品力といった事業力をさらに強化したい」

――事業環境の認識は。

 「当社の歴史の中でも稀に見る恵まれた環境にある。セグメントは関東圏を中心に大型プロジェクトが目白押しで、RCセグメントで言えば東京外環道路は本線で約170万トン、横浜湘南道路や環状南線など横浜の道路トンネルで約100万トンが使用される。各セグメントメーカーはフル生産の状況にあり、当社も東松山工場や茨城工場、金谷工場の生産体制を整備してプロジェクトの増加に対応している。数年は旺盛な需要環境が続くと見ており、需要をしっか捕捉して設備を遊ばせないようにしたい」

――旺盛な需要環境でどのような事業展開を。

 「現在は好環境下にあるが、間違いなく冬の時代が来る。厳しい環境になってもしっかりした収益を出せるよう、今の段階でどこまで体質を強化できるかが重要と考えている。リニア中央新幹線も控え各社は生産能力を増強しており、競争条件は厳しくなっている。大断面や大型化といったニーズに対し、既存商品の改良や新商品開発で応えることで、差別化を図っていく。高い商品力と施工力に裏打ちされた営業力を磨いていく。技術と営業が一体となって設計段階から折り込むなど合わせ技が大切で、鉄とコンクリート双方の強みを生かしたハイブリッド商品などニーズに合った製品を精力的に投入したい」

――強みを生かしていくと。

 「当社の強みであるプレキャストコンクリート製品は現場打ちコンクリートに比べ短工期で大幅な省人化も可能となる。建設労働者の需給がタイト化する中で、プレキャスト製品の展開は重要なメッセージとなる。施主へプレキャスト製品のよさをPRして工法を世に広めることは国の政策にも合致している。業界を引っ張る位置付けとなれるよう、存在感を発揮していきたい」

 「また、当社はグループ会社のジオファクトが一部施工を担っており、施工技術の提案から実行までできることが強み。ユーザーのニーズを吸い上げていくためにもここを強化していこうと考えている」

――海外戦略は。

 「ベトナムでは技術供与を行なっているが、同国初の地下鉄には当社が技術供与したメーカーの製品が採用された。また、マレーシアに製造拠点、シンガポールに販社を2年前に設立したが、本格的な立ち上げに移行している。需要の変動が日本以上に大きく、厳しい状況に直面することもあるが、これに応じた生産体制の整備と収益基盤の構築を継続していく。将来的には東アジア全域にセグメントやRC土木製品を展開していきたいが、まずは地産地消ベースで地道に足場を固めていく」

――課題は。

 「本部や事業部、工場などの壁を超えた横串を通すことでさらなる力を発揮できる。長所を全社へ水平展開していけるよう、風通しをよくしていく。多少嫌われても新しい風や刺激を与えられる存在になりたい。新日鉄住金グループとのシナジーも発揮していく(村上 倫)

プロフィール

 会社人生の半分を建材薄板などの営業畑で過ごす。明朗快活な印象で、自己評価は温厚誠実。信条は『至誠』で「誠意を尽くして逃げずに真正面から事に当たれば道が拓けると思ってやってきた」と。経営上では「公平感と納得感を大事にしたい」。趣味はウォーキングと最近始めた水泳だが「本当は各駅停車で行くひとり旅」と笑顔。

略歴

 端山 真吾氏(はやま・しんご)82年九州大学法学部法学科卒、新日本製鉄入社、06年大分製鉄所生産管理部部長、09年上海事務所長、12年新日鉄住金物流部長、17年4月ジオスター常任顧問、17年6月社長就任。58年8月22日生まれ、59歳。

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